2017年10月31日

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世界の製造業の拠点はベトナムからフィリピンへ?

世界の製造業の拠点はベトナムからフィリピンへ?

2018年アセアンビジネスの展望調査報告によると、米国企業幹部らはベトナムについて、アセアン地域での投資先としてトップにその名を挙げている。

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フィリピンは5位で、ミャンマー、インドネシア、タイに続く。

ベトナムは投資環境改善の点においてもアセアン諸国の中で2位に位置づけられており、ベトナムで調査を受けた米国企業幹部の54%が、その改善状況について肯定的な意見を示した。
 
一方でフィリピンは利益見通しの点で最も有望視されており、調査対象となった企業幹部の85%が2018年までに増益が見込まれるとした。だがベトナムもまた、企業幹部の84%が増益を見込んだ。
 
フィリピンにある韓国商工会議所は、1月にRodrigo Duterte大統領のきまぐれな麻薬戦争の最中、警察本部に韓国人事業家のJee Ick-joo氏が誘拐された事件に対し強く非難し、同時にフィリピンにいる韓国人の「安全を確保する」ことについて政府の「一層の努力」を求めた。
 
「我々は、韓国のビジネスマンだけでなく、フィリピンに住む12万人の韓国人に対するあらゆる暴力と不当な扱いについて強く非難する。韓国では約5万人のフィリピン労働者の生活を守り、尊重している。」とこの声明で述べた。フィリピンは韓国にとって、東南アジア最大の海外移住先となっている。
 
フィリピンのRodrigo Duterte大統領は、昨年の大統領着任後に違法麻薬取引に関して論争の多い超法規的取締りを開始した。反麻薬作戦において、警察に対してより攻撃的に取り締まるよう求めた彼の過去の発言は、警察を残忍にし、兵器の使用を過度に煽ったと批判されている。
  
Jee氏のような市民が警察による暴力や虐待の被害者となるなど、この絶え間ない薬物戦争によってもたらされた安全問題が投資家の心理にどの程度影響を与えたかを示す具体的な数字はまだないが、海外のビジネス団体などは同国の人権侵害に関する懸念を表明し続けてきた。
 
「強い経済」
労働組合Partido ManggagawaのRene Magtubo氏は、韓国企業が労働組合の組織化を避けるためだけの目的で、フィリピンの事業所を閉鎖していることについて憂慮している。 Magtubo氏は韓国系Sein Together Phils社の例を示した。同社では昨年9月に一時的に営業停止し、10月23日に縫製工場を再開させたが、これにより約400人の労働者が雇用を失ったという。
 
労働団結権はフィリピンでは悲惨な状況となっている。最近の国家統計によると、20人以上の労働者を雇用している事業所での労働組合加入率は、1995年から2014年までに30.5%から7.7%に減少した。(フィリピンの労働法第298条では、事業所の閉鎖は経営特権として認められているものの、労働組合の排除するために拠点を閉鎖し、海外へ移設することは不正な労働行為としている。)
 
自由労働者連合(FFW)の労働法弁護士であるJose Sonny Matula氏は、「会社の役員は民事責任だけでなく、刑事責任も負う可能性があります。」と述べた。
 
Matula氏は、労働組合を排除する目的で移転するような悪質な店や事業所は、経済協力開発機構(OECD)のガイドラインによって対処できるものの、問題の会社の本社がOECD加盟国にある場合だけだと説明した。
 
FFWは過去に、ILO条約87条または1948年の結社の自由および労働団結権保護に関する条約を踏まえたOECDガイドラインを引用し、フィリピン最高裁判所において勝訴を得たことがある。こうし訴訟は会社が所在するOECD加盟国の連絡事務所に対しても起こされることがある。
 
Matula氏は、フィリピンを離れようとする外国人投資家に悪質な事案がないことを保証する予防策は現在のところないと述べた。企業の撤退コストを増やすために、「債務返済保証制度」などを施設閉鎖の要件に追加するのは、良い予防策となるかもしれないと彼は述べた。
 
しかしLee氏は、韓国商工会議所の会員が感じているフィリピンで事業を行うことのコストと難しさについて、この問題が企業レベルでなく国家レベルでのものであることが明白だと述べた。
 
閉鎖するための最低限の法律要件が満たされている限り、外国企業が引き続きフィリピンにおいて事業を運営する責任はない。最低要件には、解雇給付や労働局への事前通知などが含まれる。また解雇給付は、破産によって事業が終了される場合は免除される。
 
一方で政府には、国の労働者に彼らとその家族が快適に生活できるだけの仕事を持てるよう、投資家を引きつける義務がある。だが政府は、「経済戦略が功を奏しつつある」という説に固執している。
 
大統領広報官Ernesto Abella氏は声明の中で「経済改善の兆し」として、GDP成長率6.4%、2017年上半期の就業率57.7%、10月12日におけるフィリピン証券取引所指数が8,400ポイント高であったこと、2017年8月の輸出売上高が9.3%増の55億米ドルであったこと、世界銀行の2017年の世界経済見通しにおいてフィリピンが世界第10位の経済成長を遂げたことを挙げた。
 
Abella広報官が指摘したように、数字は安定している。 しかし、フィリピンからベトナムへの製造移転によって失業した人々は、こうした経済成長から抜け落ちている。 彼らはその日暮らしで、選択肢はほとんどなく、将来のことはまったく見通せない。 彼らの関心は次の食事代のことである。
 
マクロ経済の強力なファンダメンタルズが、彼らのような草の根のフィリピン人に恩恵をもたらすには、まだ多くのことが必要である。
 
ソース:http://apparelresource.asia/news/item_3097.html

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