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受注後3時間以内に配達完了、ドイツ家電量販大手が新サービス

傘下の量販チェーンであるメディア・マルクト、ザトゥーンの実店舗ないしオンラインショップで購入した顧客に対し迅速配達サービスを提供。商品の注文後30分~3時間で自宅に届ける。配達料金は14.95ユーロで、顧客は注文から4日間以内であれば配達時間帯を2時間刻みで指定できる。
 
アマゾンのSDDサービスは朝のうちに注文した商品をその日の18~21時に配達するというもの。料金は9.99ユーロ(年会費を支払うプライム会員は注文額が20ユーロ以上であれば無料)とメディア・ザトゥーンより安いものの、配達のスピードと柔軟性で劣る。配達地域も計14の大都市圏に限られている。
 
メディア・ザトゥーンは配達をミュンヘンの運輸会社ティラミゾー(tiramizoo)に委託する。ティラミゾーはSDDをドイツで他社に先駆けて開始した事業者で、提携するドイツの輸送会社は約1,600社に上る。
 
注文を受けた商品は最寄りの店舗から配達する。メディア・ザトゥーンには全国の約170都市に店舗(店舗数はメディア・マルクトが約240カ所、ザトゥーンが155カ所)を持つという強みがあり、国内の80%以上に地域に3時間以内で配達できる。実店舗を持たないアマゾンと異なりSDD実施に向けて配達インフラを新たに整備する必要がない。
 
経済紙『ハンデルスブラット』によると、実店舗を配達拠点として利用する取り組みはすでに、スウェーデンのウィンタースポーツ用品メーカーであるピーク・パフォーマンスが実施。配達に要する日数を2日短縮するとともに、同コストを14%圧縮した。
 
メディア・ザトゥーンは今回のサービス開始に先立ってパイロットプロジェクトを昨年5月から実施。この結果、迅速配達サービスを必要とする顧客は限られるものの、一定のニーズがあることが確認されたため、全国展開へと切り替えた。同サービスを利用するのは◇テレビ、洗濯機、ノートパソコンなど高額な商品を購入した◇旅行前日になってデジタルカムコーダーの記録媒体がないことに気づいたり、冷蔵庫が急な故障で使えなくなった――といったケースで多いという。
 

ネット通販の攻勢に対応

 
小売業界ではネット通販が市場をけん引する傾向が長期的に定着している。独小売業中央連盟(HDE)によると、今年の小売売上高は4,710億ユーロで、2005年比で9.5%の伸びにとどまるのに対し、ネット通販は同3倍の417億ユーロに拡大。小売売上に占めるシェアは3.2%から8.9%へと上昇した。
 
こうした流れを受けて実店舗型小売店の業績は全般的に悪化している。メディア・ザトゥーンは事態の打開に向けて11年秋、実店舗とネット通販を組み合わせて展開するマルチチャンネル戦略を開始した。顧客は販売員と相談した後でネット注文したり、自宅への宅配の代わりに店頭で受け取ることができるようになった。対面サービスとネット通販の便利さを連携させるこのサービスの効果で、15年9月期の売上高は前期比3.6%増の217億ユーロに拡大。ネット販売の売上高は20%以上増えて18億ユーロに達した。利益も大きく伸びており、14年10月~15年6月(9カ月期)の営業利益(EBIT、特別要因を除く)は51%増の3億900万ユーロに拡大した。
 
迅速配達サービスはこれに続く成長戦略で、同社は他国でも展開する考えだ。オーストリアとオランダではすでにパイロットプロジェクトを実施している。