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中国企業の欧州M&A、過去最高の179件に

 
EYは中国企業による欧州企業への新規出資に関する統計(件数は成約ベースで、出資・買収手続きの終了していないものを含む)を毎年、発表している。それによると、中国資本による欧州企業への出資件数は05年には34件にとどまった。昨年はその5.3倍に達しており、中国勢が欧州でM&A活動(少数出資を含む)を大幅に拡大してきたことが分かる。
 
昨年の件数を国別でみると、独企業を対象とするものが前年に引き続き最も多く、36件に上った。2位は英国企業で、前年の26件から34件へと大きく増加。独との差が大幅に狭まった。両国の企業に対する中国資本のM&Aは10年から急速に増えだし、3位以下との差が鮮明になっている。
 
独企業に対するM&A36件の内訳をみると、最も多かったのは機械などの投資財分野で、12件に上った。2位は消費財・流通で前年の2倍の6件に拡大。前年は0件だったライフサイエンスは5件で3位となった。自動車は前年の半分の4件に減少した。
 
英企業に対するM&Aではインフラ、旅行・余暇・娯楽分野、仏企業ではワイナリー、ホテルが多い。
 
独企業へのM&Aで昨年、規模が最も大きかったのは複合企業・復星国際による名門銀行ハウク・ウント・アウフホイザーの買収で、取引額は2億1,000万ドルだった。ただ、香港の複合企業CKハチソン・ホールディングスによるスペインの通信大手テレフォニカの英携帯電話サービス部門O2買収(同154億ドル)、中国化工集団による伊タイヤ大手ピレリの買収(89億ドル)に比べると規模は小さい。成約時期が今年1月だったためEYの統計対象とならなかったものの、中国化工は独ゴム・プラスチック加工機械大手のクラウス・マッファイを9億2,500万ユーロで買収する予定。実現すれば中国企業による独企業の買収で過去最高を更新する。
 
対独M&Aの件数を投資元国別でみると、中国は米国(158件)、英国(77件)、フランス(66件)、スイス(58件)に次いで5番目に多く、昨年の6位からワンランク上昇した。日本は件数が前年の26件から27件へと増加したものの、順位は横ばいの7位だった。オランダは前年の39件から22件へと大きく減少し、5位から8位へと後退した。
 
年初に株価が急落するなど中国の景気が悪化していることに関してEYのパートナーは「中国経済は近代化を一段と推し進めなければならないことがまさに今、明らかになった」と指摘。中国企業の多くは自国経済を高い水準へと押し上げるために外資の買収をフルに活用するとして、欧州での活発なM&A活動は今後も続くとの見方を示した。ユーロ安は追い風になるとみている。
 
photo by Meng Tian on flickr