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【外国人の視点】日本がヨーロッパより「家族向け社会」でない理由5つ

【外国人の視点】日本がヨーロッパより「家族向け社会」でない理由5つ

「結婚なんてコスパが悪い」と言って、結婚したがらない独身男性が増えている。家族をつくることをコスパと流通用語で表現すること事態がおかしいという論調もあるが、結婚したがらない人の気持ちもわからないわけではない。仕事してそれなりに自立・安定した生活ができている独身者にとっては、日本で結婚して子育てをするほうがリスクが高いだろう。

筆者はフランス在住だが、ここで生活していると、日本がいかに結婚して子育てする“家族向け”の社会でないかがわかる。日本はヨーロッパ諸国に比べ、家庭をもつことの良さを実感できる機会が少なく、逆に負担ばかりが大きい社会構造をもっているからだ。

そこで今回は、日本がヨーロッパの国に比べて、「ファミリー向け社会でない理由」を5つ紹介する。一億総活躍社会を目指す日本は、これらの問題点を改善していくべきではないだろうか。

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【1】勤務時間が長すぎる
日本人は忙しい。2009年度経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本人の1日の平均睡眠時間は7時間50分。1位のフランスより1時間も少なく、18カ国中、韓国に次いで2番目に短かった。勤務時間の長さがその原因の一つとされており、ビジネスパーソンの6割が睡眠不足を感じているという報告もある。
 
夜8時には家族全員が食卓について夕食を食べる習慣のあるヨーロッパに比べると、日本人は圧倒的に家族と過ごせる時間が短い。日本の職場環境は勤務時間が長いのに加え、職場の飲み会に参加しなくてはならないという企業風土があるため、「家庭よりも仕事が優先」という価値観が根付いている。
 
妻や子どもがいても、仕事に忙殺され、心を通わせるコミュニケーションをとる時間がなければ、「家族がいてくれて良かった」と実感できる機会はない。家族に感謝されているという実感もなく、家のローンと子どもの教育費を稼ぐために、毎日睡眠時間を削って働く生活を考えれば、結婚しないで独身のままでいたいという選択も理解できるのではないだろうか。
 
【2】まとまった休みが取れない
ヨーロッパ家庭と日本家庭の習慣で最も大きな違いといえば、バカンスの有無である。ヨーロッパ人は毎年夏になると3週間程度のまとまった休みをとり、家族で旅行に出かける。子どものいるヨーロッパの夫婦に、「あなたは何のために働くのですか?」と質問すると、「子どもたちと一緒にバカンスに行くためだ」と答える人がとても多い。子どもがいるヨーロッパ人にとっては、まさしく「バカンスが生きがい」なわけだ。
 
ヨーロッパ人夫婦がバカンス先でゆっくりと子どもたちと話す時間を大切だと感じるのは、日々の仕事から完全に解放された時間を持つことで、子どもの成長や家族の温かさを実感し、「努力する意味」を見出すことができるからである。
 
逆に、日本は祝日が多いわりに、有給休暇の消化率が低く、まとまった休みがとれない。このような日本型の休み方では、ヨーロッパ人のようにゆっくりと家族のために時間を割くことはできず、完全に普段の生活から離れることもできない。それどころか、「家族のために頑張る意味」なんて見いだせず、休日は単純にエネルギーを補給して終わりになってしまう。
 
よって、分散した細切れのような休み方は、ファミリー向けではない。家族向け社会を実現したいのなら、仕事から完全に開放され、家族だけに集中できる時間を作ってあげるべきだ。
 
【3】教育費が高すぎる
金銭面の問題を考え、結婚しない人生を選ぶ人も多い。家庭を持つことによる大きな金銭的負担のひとつといえば、教育費。なぜ日本の教育費はこんなにも高いのか?それは、日本は教育への公的支出が著しく少ないからである。
 
経済協力開発機構(OECD)に加盟する34カ国の中で、高等教育に対する公的支出の割合はワースト2位。国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合に至っては、最下位である。
 
それに対し、フランスの国立大学は授業料はゼロ。デンマークは学費は無償、アイルランド、ルクセンブルグ、マルタでは授業料は無償である。イギリスでも「卒業後払い制度」ががあり、無償から63万円の間で決める制度が導入されている。
 
本来なら、世界有数の先進国である日本はもっと教育費に予算を割くべきである。国民の教育水準を上げるのは政府の責任であり、義務だ。家庭における貧富の差に関係なく、誰もが高等教育をうけられる社会にしていく必要がある。
 
世界の常識は学費無化の方向にあるのに、日本の教育費にかける予算はあまりに少なく、各家庭の負担が大きすぎるから、「結婚はコスパが高い」なんて言われてしまうのだ。
 
【4】水商売の存在
ホステスやホストがいる水商売の存在も、ファミリー向け社会の実現には妨げとなる。もちろんヨーロッパにも売春婦やストリップバーのような水商売産業があるが、日本ほど大衆化していない。夜の世界への距離が、日本は他の国に比べてとても近いのだ。
 
水商売が身近であることによる社会の影響は、かなり大きい。上司との飲みで、キャバクラや風俗に連れていかれることも少なくない。家庭があるのに、キャバクラ通いがやめられない男性は意外と多い。キャバクラや風俗が原因で、夫婦・家族関係に亀裂が入ったという人も珍しくはないのではないか。
 
反対に、このような誘惑が最初から一般的ではないヨーロッパでは、水商売が原因で離婚に至ったという話はあまり聞かない。そもそも働く男性の息抜きの場として、キャバクラという「外の世界」に求める社会や風習自体がおかしいように思う。ファミリー向け社会という観点からは、水商売の存在は邪魔である。
 
【5】遊ぶ場所が多すぎる
一見すると、遊ぶ場所が多いのはファミリー向けだと思われるかもしれないが、逆である。日本にはカラオケボックスやボーリング場、ゲームセンターなどの娯楽施設が、ヨーロッパの国に比べて非常に多いが、これが「家族で過ごす時間」の妨げになっている。
 
筆者はフランスに来て間もないころ、フランスには遊び場が少なくとても退屈に感じた。日曜日にはどこのお店も閉まってしまうので、出かけることもできない。家族と家で過ごすしかないわけだ。
 
しかし、だんだんこれに慣れてくると、することが何もない状態でも有意義な時間を過ごせるようになってくる。「何かをすること」が休日の目的ではなく、「家族と一緒に過ごすこと」が目的となり、家族間のコミュニケーションが活発になる。
 
家族というのは本来、一緒にいて何もすることがなくても居心地の悪さを感じないというのが理想であり、休日というのは何をしなくても「あなたがいてくれるだけでいい」というメッセージを伝えられる絶好の機会でもあるはずだ。常に何かをしていないと落ち着かない状態に陥りやすい便利な日本社会では、家族との繋がりを実感できる機会が奪われてしまうのではないだろうか。
 
終わりに
逆に言えば、日本は結婚しない独身貴族には居心地のいい国のように思う。一人でいるのが好きで、自由に自分の趣味に時間を割き、仕事が大好きな人にはこれほどいい国はないのではないか。
 
日本がこんな社会だから、恋愛に興味を示さない独身を貫こうとする若者が増えたのも、ある意味で当然の結果だろう。「結婚なんてコスパが悪い」という主張は、正しい。
 
photo by uuuuu uuuuuya on flickr

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