2016年7月6日

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イギリスのEU離脱交渉開始、先送りで合意=EU首脳会議

イギリスのEU離脱交渉開始、先送りで合意=EU首脳会議

EUは6月28日に開いた首脳会議で、英国のEU離脱に向けた交渉開始を先送りすることで合意した。交渉開始の前提となる離脱通告を次期首相が決まるまで延期する方針の英国に対して、他の27カ国では即座の通告を求める動きが強まっていたが、最終的に猶予を与えることを容認した。

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EU側には離脱交渉を迅速に進め、英国がEUから離れることで大きな対価を払うことを世界に見せつけることで、他の加盟国に離脱の動きが広がる“離脱ドミノ”を食い止めたいという思惑がある。このため、英政府に離脱を早急に通告するよう求める気運が高まっていた。しかし、首脳会議では英国の内政が混乱していることから、同国の要望を受け入れ、猶予を認めた。EUのトゥスク大統領(欧州理事会常任議長)は記者会見で、「ほこりが静まるまで時間がかかることを理解した」と語った。もっとも、実際には英国が離脱を通告しない限り、交渉を開始できないという事情があり、英の要求を呑まざるを得なかった格好だ。
 
国民投票でEU離脱派の勝利が確定した直後に辞意を表明したキャメロン首相は、当面続投し、離脱通告を新首相に委ねる方針を示していた。英与党の保守党は9月9日にもキャメロン首相の後任を選出する予定。今回の合意によって、離脱交渉開始は9月以降に先送りされることになる。
 
ただ、EU側はできる限り早期の離脱交渉開始が必要とする姿勢を崩していない。欧州委員会のユンケル委員長は記者会見で、英政府による離脱通告の時期について「次期首相に残留支持派の人物が決まった場合は就任から2週間後。離脱支持派が就任すれば翌日に行うべきだ」と述べた。
 
キャメロン首相は記者会見で、英国はEUを離脱しても「欧州に背を向けるわけではない」と述べ、緊密な関係の維持を望む意向を表明。交渉を通じてEU単一市場へのアクセスなどを確保したい考えをにじませた。
 
しかし、EU側は交渉に厳しい姿勢で臨む方針で、独メルケル首相は「家族から離反する者は、義務だけ放棄し、特権を維持することは認められない」と述べ、“いいとこ取り”を許さないことを言明。仏オランド大統領は「EUには4つの自由がある。域内の人の自由な移動を受け入れずに、資本、モノ、サービスの自由な移動の恩恵を受けることは認められない」と述べ、移民制限を行いながら単一市場にとどまることは論外との見解を示した。
 
英国を除く27カ国は29日に非公式首脳会議を開き、こうした方針で英国に対応することを確認。共同声明に「単一市場へのアクセスには、4つの自由全てを受け入れることが求められる」との文言を盛り込んだ。また、英国が離脱を通告する前に非公式の離脱交渉に着手しないことも言明し、水面下で協議を進め、有利な条件を取り付けようとする英国の動きをけん制した。
 
EU27カ国は英の新首相選出後の9月16日にスロバキアで非公式首脳会議を開き、今後の対応を協議する。27カ国は今回の会議で、結束を維持することを確認した一方で、域内でEUへの不満が強まっていることを受けて、さらなる改革を検討することで一致。9月の非公式首脳会議で同問題について協議することを決めた。

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