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オランダ下院選で自由民主党が第1党維持、極右・自由党は失速

オランダ下院選で自由民主党が第1党維持、極右・自由党は失速

オランダで15日に実施された下院(定数150)選挙で、中道右派の与党・自由民主党が33議席を獲得して第1党を維持した。

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移民排斥や反EUを唱える極右・自由党は選挙直前まで支持率でトップに立っていたが、最終的な獲得議席は20議席にとどまり、排外主義的なポピュリズム(大衆迎合主義)政党が政権を奪取する事態はひとまず回避された。大統領選挙や議会選挙を控えるフランスやドイツをはじめ、欧州諸国の首脳らは選挙結果を歓迎しているが、欧州全体に広がる反移民や反EUの流れを変えるきっかけになるかは不透明だ。
 
今回の下院選は欧州で台頭するポピュリズム政党の動向を占う選挙として関心が高く、投票率は約80%と、前回(2012年)を6ポイント近く上回った。ルッテ首相は15日深夜、「オランダ国民は英国のEU離脱、トランプ米大統領誕生と続いた誤ったポピュリズムに待ったをかけた」と宣言した。しかし、財政再建に向けて断行した年金受給年齢の引き上げなどが逆風となり、ルッテ氏率いる自由民主党の議席は40から33に減少。連立与党を組む労働党は議席を35から9に減らす大敗となった。
 
一方、自由党は議席を12から20に伸ばし、自由民主党に次ぐ第2勢力に浮上。ウィルダース党首はツイッターに「議席を増やしたことはわが党の勝利だ」とのコメントを投稿した。しかし、2月末時点の予想では30議席に迫る勢いをみせていただけに、終盤で失速したのは明らかだ。オランダは政党の数が多く、既存の政治に不満を持つ層の受け皿が多様なため、極右政党に政権を委ねることに懐疑的な有権者が、最終的に中道右派や中道左派、環境政党などに投票した結果、「極右勝利」が回避されたとの見方がある。
 
さらに、ルッテ政権が自由党の躍進を阻むため、選挙戦で移民に対して厳しい姿勢を打ち出したことも流れを変える要因になった。首相は1月、イスラム系移民を念頭に、新聞広告で「男女平等などの社会規範を尊重できないのであれば、この国にとどまるべきではない」と警告。また、今月11日はオランダ国内で開かれた政治集会に参加しようとしたトルコのチャプシオール外相らの入国を拒否した。政府は「治安を維持できない」ためと説明したが、国民の間で広がりをみせる反イスラム票を取り込む狙いがあったとみられる。
 
ルッテ氏は共に19議席を獲得した中道右派のキリスト教民主勢力、中道左派の民主66との連立協議に入る見通し。一方、ウィルダース氏は連立に強い意欲を示しているが、主要政党は自由党との連立を拒絶しており、政権入りの可能性は極めて低い。
 
仮にオランダで自由党が勝利すれば、欧州で反移民・反グローバル化を掲げる極右政党が一気に勢力を拡大し、EUへの深刻な打撃となったことは間違いない。その意味で自由民主党が第1党を維持した意義は大きいが、フランスでは反移民を掲げるルペン氏率いる極右・国民戦線の勢いは衰えておらず、識者らは約1カ月後に迫った大統領選への影響は「限定的」と指摘している。
 
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ソース:http://fbc.de/eur/eur3999/

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