2017年3月24日

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ファストファッション産業はミャンマーの国民にまっとうな仕事をもたらすのか?【前編】

ファストファッション産業はミャンマーの国民にまっとうな仕事をもたらすのか?【前編】

ミャンマーは軍事政権によって50年間も支配されていた。こうした長期間に亘る経済的孤立の後、ミャンマーが民主化へ向けた第一歩を踏み出したことを受けて各国の経済制裁が解除されたため、外国投資が急速に増加している。

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輸出向けアパレル産業はこの新規ビジネスチャンスの恩恵を受けて急速に拡大している。廉価な労働コストと有利な取引条件に惹きつけられ、H&MやPrimarkを含む国際ブランドや小売業者がミャンマーからの調達を一層増加させ、アジアのアパレルメーカーもミャンマーに店舗を開業し始めている。
 
Myue & Soe縫製工場の労働者が数年に亘って賃上げ交渉を行っている間に、縫製工場の数は3倍近くにまで増加した。ミャンマー縫製業者協会(MGMA)は、現在35万人いる縫製労働者が、2024年までに150万人にも増加すると見込んでいる。
 
最近発刊された「ミャンマーのジレンマ」というレポートでは、オランダの多国籍企業研究センターがミャンマーのアパレル産業における人権・労働問題を取り上げている。
ミャンマーのAction Labor Rights(ALR)、Labour Rights Defenders and Promoters(LRDP) という2つのNGO団体が協力し、12の工場から400人の労働者、および様々なステークホルダーに対してインタビューを行った。
 
ミャンマーへの投資ブームはリスクを孕んでいる。社会改革に向けて小規模な改善が実施されてきたものの、大きな課題は残されたままである。法治社会は十分に機能しておらず、軍は引き続き社会に対して大きな影響力を維持し、国内のいくつかの地域で現地民との戦闘を繰り広げている。
 
軍や元軍人の土地のオーナーらは、工業団地や工場の開発によって利権を得ている。村は事前の交渉や適切な補償を受けることなく、工業団地や経済特区開発を行うために立ち退きを迫られている。

 
50年以上にもわたり、独立系労働組合の結成が禁止され、ストライキも禁止、いかなる抗議活動も厳しく抑制されてきた。
労働組合、人権活動家や反対勢力は、拘束されて何年も投獄されたり、その他の者は逃れて亡命したりした。しかし労働組合や独立系NGO団体にある程度の自由が認められた現在では、労働運動が急速に拡大している。
  
その中で大きな課題がこの先に待ち受けている。労働者らは一般に権利意識が薄く、縫製工場には労働組合がほとんど結成されていない。労働組合を結成しようとする試みはしばしば波紋を呼び、組合指導者や労働活動家は解雇されてブラックリストに掲載され、新しい仕事を見つけることが困難な状況となっている。
 
そのため、ミャンマーのアパレル産業は成長を続けている一方で、労働者は口をつぐんで労働に勤しんでいる。多くの縫製労働者は貧しい田舎の出身で、彼らはしばしば電気や水道もないようなスラムに行き着く。
 
法定の最低賃金は1日当たり2.65米ドルであるが、ミャンマーの法律では、見習い、試用期間として最初の6ヶ月間は法定の50~75%の賃金しか支払わないことを認めているため、新規雇用労働者は法定最低賃金以下しか支払われないことが多くある。
 
生計を立てるために彼らは長時間働き、一日に最大11時間も働くことがある。繁忙期には、労働者はサービス残業を強制され、病気のために働くことができない場合には給与が差し押さえられることも頻繁に起こる。15歳未満の少女がアパレル産業で働くことも珍しくない。そしてさらに悪いことには、労働者が苦情を申し立て、彼らを救済するような手段がほとんどないことである。
  
こうした問題の多くは、ミャンマーの遅れている労働法のもとでは違反とならない。ミャンマーの労働法では、生活に十分な賃金を支給しないことが認められており、就労最低年齢はわずか14歳で、労働者が労働組合を結成、加入し、集団的行動を取ることを妨げている。
 
(後編につづく)
 
ソース:http://apparelresource.asia/news/item_2795.html
 
>>あわせて読みたい 『ミャンマーのアパレル業界団体が、縫製工場での児童就労を否定【前編】』

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