2017年6月14日

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ドイツ:企業・個人年金の受給者拡大へ

ドイツ:企業・個人年金の受給者拡大へ

ドイツ連邦議会(下院)は1日、企業年金強化法案を与党の賛成多数で可決した。同法案は少子・高齢化の進展を背景に公的年金を補う収入源の確保が安定した老後を過ごすうえで今後、重要性を増すことが確実になっていることを踏まえたもので、企業・個人年金制度を雇用主と被用者がともに利用しやすいものへと改めることが狙い。来年1月1日付で施行される。

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同国では少子・高齢化をにらんで2002年に「リースター年金」という個人年金が導入された。被用者が収入の一部を毎月、リースター年金商品の積み立てに当てると、国から助成金を受給できるというもので、政府は特に、公的年金の受給額が少ない低所得者の利用を期待していた。
だが、この思惑は空振りに終わった。低所得層では企業・個人年金の加入率が低く、現役被用者全体に占める加入者の割合は57%にとどまる。民間企業に限ると40%へと低下する。
加入率は経営規模によって大きく異なり、従業員数1,000人以上の企業で83%に達するのに対し、同50~249人では44%、10人未満では28%に過ぎない。小規模企業の給与水準は一般的に低いことから、こうした企業で働く被用者は退職後に受給する公的年金が少なく、企業・個人年金で収入を補わなければ貧困に転落するリスクが高い。
 
政府は今回の法改正によりドイツ全体の加入率を「80%を大幅に上回る水準。できれば90%へと引き上げる」(与党の年金政策担当者)目標だ。
目標の実現に向けて様々な新ルールを法案に盛り込んだ。そのひとつは雇用者団体と労働組合が確定拠出型の企業年金を労使協定の形で導入できる「目標年金(Zielrente)」だ。確定給付型と異なり運用目標に届かなくても企業は積立金を事後的に積み増す必要がないため、予期せぬ負担が発生し経営を圧迫するリスクが回避される。政府はこれにより、中小企業でも企業年金の導入が増えると期待している。
目的年金は労使協定の拘束を受けない企業でも雇用主と被用者が合意すれば導入できる。また、既存の確定給付型企業年金には変更が生じない。
 
法案にはまた、月収2,200ユーロ未満(支給額ベース)の被用者の企業年金保険料を一部負担する企業に対し負担額の30%を国が支給するルールも盛り込まれた。企業の負担額は年240~480ユーロで、240ユーロを負担した場合は国から72ユーロ、480ユーロを負担した場合は同144ユーロを受け取ることができる。
 
リースター年金助成額を拡大
企業・個人年金への被用者の加入意欲を高めるためには、(1)リースター年金の助成額を拡大する(2)被用者が給与の一部を企業年金の保険料に切り替える場合、雇用主に保険料の15%の負担を義務づける(3)給与の一部を企業・個人年金保険料に振り向ける被用者の税控除枠を拡大する(4)生活保護費との相殺規定を緩和する――といったルールが導入される。
リースター年金では国の基礎助成金がこれまでの年154ユーロから175ユーロへと引き上げられ、子供を持つ被用者を対象とする助成金も一子当たり年185ユーロから300ユーロ(2008年以降に産まれた子供)へと引き上げられる。
(2)のルールで企業の負担が増加することはない。社会保険料の課金対象となる所得が企業年金保険料の分だけ低下し、それに伴い企業の社会保険料負担も低下するためだ。
(3)の税控除枠はこれまで、公的年金保険料の最高額が適用される収入の下限(毎年、改訂される。今年は西部地区で年7万6,200ユーロ)の4%に制限されていた。今後はこれが8%へと引き上げられる。
企業・個人年金の受給者が生活保護を受ける場合、これまでは同年金が全額、生活保護費と相殺され、実質的に受給できなかった。このルールは生活保護への転落リスクが大きい低所得層が企業・個人年金への加入をためらう原因となってきたことから、与党は今回の法改正で、企業年金などの老後資金について月202ユーロまでは生活保護費と相殺しないルールの導入を決めた。
 
ソース:http://fbc.de/sc/sc39869/

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