2017年6月26日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • copy

カタールvsサウジでロシアは

中東の6ヶ国は5日、カタールと突然断交した。カタールのアラブ世界からの孤立を意図したものである。ロシアの専門家は、ロシアがこの問題でどこの側にも立つべきではないと考える。カタールとの関係も、その対立する国々との関係も難しいためだ。

 

オレグ・エゴロフ、ロシアNOWへの特別寄稿

この記事の続きを読む

 
ペルシア湾岸の小さな国カタール(面積1万1586平方キロメートル、人口240万人)に、世界の注目が集まった。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、エジプト、イエメン、モルジブの6ヶ国およびリビアの暫定政府が、カタールと断交した。
 
カタールは(ロシアで禁止されている過激派組織「イスラム国(IS)」、「アルカイダ」、「ムスリム同胞団」)のテロを支援し、中東地域を不安定化させていると、直接的に非難されている。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーンは、自国内に滞在するカタール人に、2週間以内に退去するよう求めた。カタール外務省は、断交した国の活動を「遺憾」としている。
 
◆ イラン要因

小さいものの、石油・ガスの資金(天然ガスの埋蔵量で世界第3位)で豊かなカタールへの攻撃は、サウジアラビアとイランの対立に関連していると、ロシア国立人文大学現代東洋学講座のグリゴリー・コサチ教授は考える。サウジアラビアは、イランを中東の主要な悪と考え、イランの脅威に対抗するため、アラブ諸国連盟を創設しようとしている。
 
カタールは、専門家によれば、独特の政策を取っているため、その報いを受けたのだという。「カタールのタミム首長が、イランを中東の重要な大国で、その役割を考慮にいれるべきだと(最近)話したことを、サウジアラビアが非難している」とコサチ教授。
 
革新開発研究所中東紛争研究部のアントン・マルダソフ部長によれば、カタール政府はその後、首長の声明をフェイクだと言ったものの、サウジアラビアの怒りを鎮めることはできなかった。カタールは実際に、イランとシリアでのシーア派とスンニ派の捕虜交換について協議するなどし、協力している。
 
アメリカのドナルド・トランプ大統領が先月24日にサウジアラビアを訪問し、イランは中東の主要な脅威だと発言してサウジアラビアへの完全な支持を表明したことも、それなりの影響をおよぼした。「この訪問はサウジアラビアにインスピレーションを与え、新たな望みを与えた」とコサチ教授。そのため、トランプ大統領の訪問後すぐに、カタールへの攻撃を決めたようだ。
 
◆ ロシアとの関係

モスクワとカタールの関係の歴史は単純ではない。2004年、チェチェン共和国の分離独立派の指導者の一人ゼリムハン・ヤンダルビエフ氏を、潜伏先のカタールで、ロシアの特殊機関員2人が殺害した。2人は終身刑を言い渡され、長期に渡る交渉の後で、ようやくロシアに帰国することができた。
 
2011年11月には、ロシアのウラジーミル・チトレンコ大使がドーハ国際空港で税関員に殺害されるという問題も発生した。マスメディアはこの事件を、シリアでロシアがシリアの政権を支援し、カタールが反政権派を支援し、対立していることと関連付けた。ロシアは事件後、カタールとの外交関係の水準をさげている。
 
シリア問題での相違以外にも、ロシアとカタールは天然ガス市場のライバルである。シリアで戦争が発生したのは、ロシアと同盟関係を結ぶアサド大統領が、カタールからシリアを経由してヨーロッパにガスパイプラインを敷設する案を阻止したためだという仮説も存在する。
 
ただ、専門家の多くは、この仮説を支持していない。石油・ガス市場の専門家ミハイル・クルチヒン氏は、フォーブス誌の記事の中で、カタールからシリアを経由してヨーロッパにパイプラインを設置するのは、経済的理由により、得策ではないと説明する。「陸上でヨーロッパにカタール産のガスを送るプロジェクトはどれも、海上で液化天然ガスを送るプロジェクトに経済的に負ける」とクルチヒン氏。
 
◆ 支持する国がない

ロシアとカタールの関係がどれほど難しくとも、中東のカタールの主要な対立国サウジアラビアとの関係もそれより良いとは言い難い。「ロシアとペルシア湾岸諸国の関係は難しい。ロシアは今、関係を改善しようと努めている」とマルダソフ部長。この条件下で、ロシアが自国には無関係なこの対立のどこかの側につく意味はないという。
 
コサチ教授も同様の観点を示す。この対立においてロシアにとって重要なのは、対立が石油・ガス市場の大きな変動に発展しないこと。他の問題にはあまり関心がない。「ロシアが対立するどこかの側を支援することで得することはない。最も賢いのは、『争わないで』という公式声明とともに、完全に中間的な立場を取ること」とコサチ教授。
 
ロシアは今のところ、そのような立場を取っている。ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、ロシアがペルシア湾岸の内部問題に干渉することはないと言い、平和的な方法で状況が解決することへの期待を表明した。カタールがテロを支援していることへの非難については、コメントを避けた。
 
ソース:ロシアNOW/https://jp.rbth.com/politics/2017/06/08/778780

この記事の提供会社

logo

ロシア・ビヨンド

https://jp.rbth.com/

メルマガ会員  
 

出島