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食品ロスが世界トップクラスの日本で、1日5人も【餓死者】が出る理由

食品ロスが世界トップクラスの日本で、1日5人も【餓死者】が出る理由

ヴェルサイユに引っ越してきて2か月。近所で、どうも気になってしょうがない場所がある。

それは普通のビルの入り口のような何の変哲もない場所なのだが、いつもその周辺に人だかりができていて、そこに集まっている人たちの身なりがどうにも気になるのだ。

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明らかに、一目で「低所得者」だとわかる、いかにもみすぼらしい風貌の人ばかりだからだ。はっきり言って清潔感が微塵もない。ホームレスなのかと疑う人もなかにはいる。すり切れて薄汚れたズボンに、季節外れのヨレヨレ厚手のトレーナー。靴は左右違う人もいたり、手が傷だらけ&泥だらけで真っ黒な人もいる。髪の毛だって汗で額にへばりついている。ひと目で、「この人たちは普通の生活をしている人じゃないだろうなぁ…」と予測がつく雰囲気といった感じだ。
   
しかし、このビルの周辺に集まる人たちは不思議なことにとても表情がいい。身なりは汚いし、みなどこか”闇”を抱えた雰囲気を持っているのだが、どの人も笑顔で、みんな目が優しい。互いに、「ボンジュール!元気?」、「良い一日を!」と感じよく挨拶を交わしていたりする。
  
なんなんだ一体、この場所は!…といつもこの場所を通り過ぎるたびに思っていた。
  
そこでそのビルの表札を見てみると、「SOS Accueil」と書いてある。ネットで調べてみると、貧困層の支援活動を行っている慈善団体だった。
 
近くにこういった団体の事務所があるからだろうか。以前、その周辺のスーパー「Franprix」の前で売れ残りの商品がたくさん入った買い物袋をホームレス3人で分け合っている様子を目にしたことがある。傷んだバナナや桃、潰れてしまった食パン、賞味期限が切れたサラダやサンドイッチなどを、仲間と楽しそうに分け合っているのだ。
  
その近くのパン屋でも、ホームレスっぽい男性が店員に無料でパンの売れ残りをもらっている姿を見た。
 
人助けを目の当たりにし、何となく良い気分になるのと同時に、貧困層の人生は過酷なんだと改めて思い知らされるような経験だった。
  
 
売れ残り食品の廃棄が禁止されているフランス
 
気になったのでネットでさらに詳しく調べてみると、フランスでは2015年に大手スーパーマーケットがまだ食べられる食品を廃棄処分することを禁じる法律が制定されたようだ。
 
売れ残った食品は慈善団体に寄付するか、家畜の飼料や肥料に転用しなければならなくなり、法律に従っていることを証明するため、スーパーマーケットは慈善団体と契約を結ぶことも義務付けられている。膨大な量の食品廃棄物を減らすため、フランス政府は3年前に、廃棄される食品の量を2025年までに半減させるという大胆な目標を打ち立てていたらしい(参照:huffingtonpost)。
  
  
日本は「食品ロス」が世界トップクラス
 
そこで日本の現状はどうなのかと調べてみると、はっきり言って酷かった。日本の食品廃棄量は世界でも1、2位を争うほど高いということを知っているだろうか。
 
政府広報によれば、日本では年間1900万トンの食品廃棄物が出ており、これは世界の7000万人が1年間食べていける量だという。日本は特に、まだ食べられるのに捨てられてしまうもの、いわゆる「食品ロス」が多く、500万トンから900万トンもあるといわれている。日本は食料の多くを海外からの輸入に頼っているが、その半分近くを捨てていることになる。金額にすると、111兆円にものぼるそうだ。(参照:healthpress
  
これは忙しいサラリーマン層を顧客にして発展し、かつデフレの影響を最も受けている日本の外食産業の現状を考えれば、納得いくはずだ。筆者は学生の頃、ホテル、居酒屋、ファミレス、レストランチェーン店など色んな種類の外食店でアルバイトをしていたが、どこも廃棄物の量はすごい。全体の半分は捨てているんじゃないかと思う。特に一流ホテルなんかで催される企業や団体の「立食パーティー」では、美味しそうな料理がごっそりと捨てられるので、見ていて本当にもったいないと思った。
 
他にも、「うちの寿司は何時間で捨てるからいつも新鮮」というのを売りにするスーパー。「つくりたて10分以内の商品しか提供しません」と自慢げにうたうファストフード店。「作りたて&出来立て」をうたい文句にする外食産業は、それだけ廃棄の量も多いということになる。
 
2009年6月にセブン‐イレブン・ジャパンが、消費期限の近い弁当を値引きして売った加盟店に圧力をかけ、安くして見切り販売をしないよう強制したとして、公正取引委員会から独占禁止法違反で排除命令が出された。
 
要するに、まだ食べられるのものでも、外食産業の収益最大化のために「容赦なく捨てる」というのが日本での食品ロスの多さに繋がっているのだ。それぞれの企業がブランドイメージを保つために、7000万人が1年食べていける量の食べ物を捨てているのだ。
  
 
1日5人も「餓死者」が出る経済大国、日本
 
一方で、日本では近年格差・貧困問題が注目されてきている。ブラック企業、ブラックバイト、子どもの貧困、貧困ビジネス化した大学の奨学金問題など、経済大国といわれる日本だが、餓死や孤立死などの悲惨なニュースは絶えることがない。生活保護に対する風当たりは強まり、行政による窓口対応の問題点も指摘されている。
 
2011年、「食糧の不足」で亡くなったのは45人。「栄養失調」で亡くなったのは1701人。合わせて1746人が飢えて死んでいるのだ。1日あたり、5人が亡くなっていることになる。(参照:ironna
 
 
これらは、日本で現実にあった餓死事件だ。
 
・06年、北九州で50代の男性が餓死。電気も水道もガスも止められていた男性は痩せ細り、自力で歩くこともままならない状態だったという。
・07年、北九州市で50代の男性が餓死。ミイラ化した遺体で発見される。男性は日記に「オニギリ食いたい」「25日米食ってない」などと書き残していた。
・12年1月には札幌で40代の姉妹が餓死・凍死とみられる状態で発見される。妹には知的障害があり、姉は綱渡りのように非正規の職を転々としながら妹を支えていた。
・13年大阪市の団地の一室で餓死か衰弱死とみられる31歳の女性の遺体が発見された。電気、ガス、水道が止められ、冷蔵庫にはマヨネーズなどの空容器のみだった。
  
 
一方で子どもの貧困問題も深刻である。これらは、NHKのクローズアップ現代で取り上げられた貧困層の子供たちの「おなかいっぱい食べたい」という声だ。
 
・ 「お年玉を正月にもらったんですけれど、それをみんな回収して米はお年玉を使って買ってくるみたいな感じで。あまりおかずも食べないで、一膳よりちょっと少ないみたいな。おなかがすいたって感じです。」(15歳男子)
・「遊んでいてファストフードをみんなが買うけど、俺は買わないで見ているだけというか。買えている人たち、他の友達がうらやましくて自分が情けない、惨めみたいな感覚でした。」(17歳男子)
  
 
豊かだと言われる日本で、こんなにも「食べたいのに食べられない」人がいるというのは、衝撃ではないだろうか。外食産業が食べられる食品を大量に捨てている一方で、それを喉から手が出るほど欲している人が、日本で、今この瞬間も確実に存在しているのである。
 
 
日本の「食品ロス」を減らすにはどうするべきか? 
  
日本の食品ロスを減らし、救える命を救うためにはやはり行政の介入が必要不可欠になってくると思う。自由競争で利益を最大化することを目標に、次々と魅力的な商品を販売しなくてはならない外食産業やスーパー、コンビニの立場を考えると、食品ロスを法律で制限する以外に方法はない。低所得者に安く食品が回る仕組みを作ったり、フランスのようにスーパーと慈善団体を提携させるというのもいい手だ。
 
それと同時に、国民の意識を変えるというのも必要だ。日本のテレビはやたら「食べ物」を映すと外国人はよく言うが、このテレビの煽りも国民の無駄な消費を助けているといえる。出来立て、作り立て、流行に飛びつくのではなく、自分にとって本当に必要なものだけをきちんと選んで買うという心がけが必要だ。国民の一人一人が「大量買い」に罪悪感を抱くくらいに意識が変われば、社会の仕組みや「食」を取り巻く産業のトレンドが変わるかもしれない。
 
多くの企業が、会社のイメージアップのために環境保護に取り組むことをアピールするように、外食産業も「食品ロス」に取り組んでいる姿勢を社会にアピールするようになれば、国民の意識も変わっていくはずだ。
 
しかし、そのためには私たちがまず、低所得者や貧困層の現実を知ろうとすることが何よりも大切だと思う。
  

フランスの教会で、ある神父さんが言った。
  
  N’OUBLIEZ PAS JAMAIS LES PAUVRES.
  
 「貧しい人たちのことを決して忘れてはいけません。」
 
ヴェルサイユのホームレスが集まるビルの前を通るたびに、この言葉が聞こえてくる。
  
ソース:https://www.madameriri.com/2017/06/23/food-loss-in-japan/
 
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