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ボルボ・カーズがエンジン車から撤退、自動車大国ドイツは足取り鈍く

ボルボ・カーズがエンジン車から撤退、自動車大国ドイツは足取り鈍く

窒素酸化物(NOx)や二酸化炭素(CO2)などの有害物質を排出する車両が近い将来、欧州市場から消え去ることが、にわかに現実味を帯びてきた。スウェーデンの高級車大手ボルボ・カーズは5日、新たに市場投入する車両を1年半後から電気自動車(EV)などに集約する方針を表明。「もっぱら内燃機関を動力源とする自動車」の販売から競合に先駆けて撤退する意向を打ち出した。

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6日にはフランスのニコラ・ユロ環境相がエンジン搭載車の販売を2040年から禁止する考えを明らかにし、排ガス規制で主導権を取る姿勢をみせた。そうしたなか、自動車大国ドイツはディーゼル車の需要減に歯止めをかけようと政財界が対策を検討するなど、身軽に動けない事情がうかがわれる。
 
ボルボ・カーズは2019年以降に市場投入する車両をEVとハイブリッド車(HV)に絞り込む。純粋なディーゼル車とガソリン車は同年以降、従来からのモデルだけを販売する。エンジンのみで動く自動車からの撤退方針を打ち出した大手メーカーは同社が初めて。
 
19年から21年にかけてEVを5モデル発売する。そのうち2モデルは「ハイパフォーマンス電動車両」ブランドと位置づける「ポールスター」で売り出す。
 
HVはEVを補う車両との位置づけで、同社は給電可能なプラグインハイブリッド車と、モーターがエンジンを補助するマイルドハイブリッド車を投入する。
 
エンジン車は現在、世界で販売される自動車の大半を占めるものの、環境規制の強化を背景に将来的にはEVなどの環境対応車に取って代わられる見通しだ。このためメーカー各社は開発の軸足をエンジン車から環境対応車へと移し始めている。
 
それでもエンジン車が自動車の中心である時代はしばらく続く見通しで、サプライヤー大手の独ボッシュは25年時点のEVとHVの世界生産台数が約2,000万台にとどまるのに対しガソリン車とディーゼル車は合わせて約8,500万台を占め、新車市場で最大のシェアを堅持すると予想している。
 
それにもかかわらずボルボ・カーズがエンジン車事業から早期に撤退するのは今後の排ガス規制に対応する車両を開発しても採算が合わないと判断したためだ。ホーカン・サムエルソン社長は独メディアの5月のインタビューで、排ガス浄化装置の化学処理で現行水準よりも低いNOx排出量を実現することは可能だが、コストが大幅に膨らむため利幅の大きい大型高級車でも採算が合わなくなると明言した。
 
同社は2010年、中国自動車大手・浙江吉利控股集団の子会社となった。中国では現在、環境対応車の普及促進策が取られており、ボルボ・カーズはEVを販売しやすい状況にある。同社はこれを追い風に利用し、EVとHVの販売台数で25年までに年100万台を実現する目標だ。同社の昨年の自動車販売台数は53万台だったことから、EVとHVだけで2倍に拡大することになる。
 
 
ディーゼル車への補助金を独5州が要求
 
ユロ仏環境相は地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」の順守に向けたCO2排出削減策の一環として、ガソリン車とディーゼル車の販売を40年から禁止する考えを表明した。目標達成に向けた具体策は示さなかったが、「自動車メーカーが技術革新を行い環境保護技術の分野でマーケットリーダーとなる」ことを支援する考えを明らかにした。
 
仏自動車大手PSAはメディアの問い合わせに、グループの販売台数に占めるEVとHVの割合を23年までに80%へと高める計画を指摘。政府の40年目標に対応できるとの考えを示唆した。
 
一方ドイツでは、都市部でのディーゼル車走行制限論議を受けて、政財界が打開策を検討しており、同国メーカーは自主的なリコールを通して欧州排ガス基準「ユーロ5」に対応したディーゼル車のソフトウエアを交換することを確約した。ソフト入れ替えの手間賃を誰が負担するかは未定だが、バイエルンやバーデン・ヴュルテンベルクなど自動車メーカーを域内に持つ5州は7日に合意した政策方針書で、製造元に負担させる考えを打ち出した。
 
5州はさらに、走行制限論議の影響で需要が急速に落ち込んでいるディーゼル車の販売をテコ入れするために、購入助成金を交付することでも意見が一致した。9月1日から適用される次期排ガス基準「ユーロ6d-TEMP」と20年1月1日から適用される「ユーロ6d」を助成対象とする考え。ディーゼル車排ガス問題の解決に向けて連邦政府が8月2日に開催する自動車業界との会合「ナショナル・フォーラム・ディーゼル」でこれらの提言を行う予定だ。
 
政府・与党はディーゼル車の走行制限を回避したい考えで、メルケル連邦首相はメディアインタビューで「我々はディーゼル車を常に支援してきた。このため簡単に決別することはない」と述べた。与党・社会民主党(SPD)のマルティン・シュルツ党首も10日、訪問先のアウディ本社工場で、ディーゼルエンジンは当面、必要な技術だと指摘。「ディーゼル車の走行禁止はばかげている」と明言した。
 
ドイツがディーゼル車を擁護するのはEVとHVの需要が相対的に小さいなかでディーゼル車の販売が大幅に落ち込むと、ガソリン車の販売が大きく増え、メーカー各社は走行1キロメートル当たりのCO2排出量を20年以降、平均95グラム以下に抑制することを義務づける欧州連合(EU)のルールを遵守できなくなるためだ。
 
フォルクスワーゲン(VW)やダイムラーなどの独メーカーは、販売台数が少なく中国市場に大きな活路を見いだせるボルボ・カーズと異なり、小回りが利かない。
 
エンジンを搭載せず部品点数も少ないEVの販売比率が急速に高まると、主力産業の自動車で雇用不安が起こるという事情も大きい。ダイムラーでは本社所在地シュツットガルトのウンターチュルクハイム地区にある乗用車用パワートレイン工場で、将来のエンジン生産縮小を相殺する措置をめぐる労使交渉で対立が先鋭化。従業員は4日(土)の残業を拒否した。
  
9月に連邦議会(下院)選挙を控えていることもあり、ドイツの政治家は仏ユロ環境相のような大胆な発言をできない状況だ。
   
ソース:http://fbc.de/sc/sc40035/
  
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