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Nike社が、労働者搾取を監視する「工場監査契約」に署名

  
労働者、学生やその他活動家によって激しいキャンペーンが繰り広げられた結果、Nike社は、Nikeの服や靴を製造する工場の労働条件について、独立した第三者の監査を受けるという画期的な約束を行った。このキャンペーンの結果は、生徒らが心一体にして取り組めば、達成できないものはないということを再び示す結果となった。世界で最大のスポーツウェアブランドに方針を変えさせられるのであれば、何でも可能という自信である。
 
巨大なアパレル会社に対し、商品の供給工場における問題に取り組むよう求めるキャンペーンは、困難であるがやりがいのある取り組みである。結局のところグローバルブランドは、複雑で多層にわたるグローバル・サプライチェーンを構築し、意図的に労働搾取工場やスキャンダルから逃れようとしている。
成功を収めたキャンペーンの共通点は、消費者と労働者が共同して取り組んでおり、多くは結果が出るまで何年も戦い続けている。
 
Nike社は今回のコミットについて賞賛されるべきではあるが、このブランドが好んでそれを行ったわけではないことに留意すべきである。このケースにおいては、Nike社を交渉のテーブルにつかせるために、2年にも及ぶ縫製労働者のストライキ、学生の運動、世界的な労働権支援団体からのサポートが必要であった。
 
このキャンペーンは縫製労働者の熱心な活動に終始した。 2015年、ベトナムのHansae工場の労働者は、賃金未払いや過労と建物内の高温を原因とした集団卒倒など、数々の労働権違反に呼応してストライキを開始した。
 
労働者人権協会(WRC)は、労働者がストライキを実行していることを知り、こうした活動に至った原因を調査しようと試みた。Nike社は労働者人権協会(WRC)のこの動きに呼応し、それまでの17年間にわたり、工場が大学の定める労働基準を遵守しているかどうかを労働者人権協会(WRC)が調査してきたという慣習を曲げ、労働者人権協会(WRC)にサプライヤー工場に立ち入らせないようにした。
 
これに対し、国際的な労働権の国際協力NGO団体が行動を起こした。労働搾取工場に反対する学生連合(USAS)は、25の大学キャンパスでキャンペーンを開始した。こうした学生のキャンペーンが拡大した結果、複数のキャンパスにおいてNike社との契約更新を解消したり、縮小したりという動きが強まった。
また600人以上の大学教員が、Nike社に方針を転換させるよう要求する手紙を送ったり、2016年にはUSASがタイの元Nike社労働者で、労働組合代表であったNoi Superlai氏を米国に招き、彼女の経験について学生に語ってもらう取り組みを行ったりした。
  
今年の国際労働者人権フォーラムでは労働搾取工場に反対する学生連合(USAS)と協力し、カンボジア労働組合連盟のYang Sophorn Yang代表と共に全米を巡り、カンボジアにあるNike社のサプライヤー工場において縫製労働者が大量失神したエピソードを学生や地域社会の人々に訴えて回った。Hansae工場の労働者らはまた、自らが工場で働いている間に経験した虐待について、リスクを省みずにカメラの前で証言した。また、草の根活動を行う労働組合、労働者センター、学生グループらは、7月のGlobal Day of Actionの日には12カ国25都市でデモ行進を行った。
 
Georgetown大学の学生は特に根気強く、8人の学生がGeorgetown大学のJon DeGioia学長のオフィスを占有して訴えた。そしてその結果、Georgetown大学がNike社との契約を終了させることとなり、Nike社の経営陣はGeorgetown大学の関係者との会合に臨み、今週発表された労働者人権協会(WRC)による工場監査契約について話し合うこととなった。
 
Nike社はあらゆる経済的影響力を行使し、自社のサプライヤー工場に対する労働者人権協会(WRC)の監査を支援し、リクエストに応じて労働者人権協会(WRC)が写真を撮影したり、工場文書のレビューやコピー、労働者と管理者へインタビューを行ったりすることに合意した。監査の後、Nike社は労働者人権協会(WRC)、工場、そしてその工場で生産している他のブランドと協力して、労働権侵害を是正するための改善計画を策定し、実行することについても合意した。
 
我々は、労働者権利団体が労働者の苦情を調査できるように取り計らうことについて、Nikeが約束したことをとても喜んでいる。他のブランドにおいても、こうしたキャンペーンに促されるのではなく、Nike社の方針に従い、自らが進んで同様の約束を示すことを願っており、それが最も効果的であると考えている。労働者の権利は、効果的な救済措置をうけられる場合にのみ保証され得るというのがその単純な理由である。
 
労働搾取工場に反対する学生連合(USAS)、International Labor Rights Forum、Clean Clothes Campaign、そしてその他のキャンペーン組織は、衣料品輸出国における草の根レベルでの労働組合の組織化や試みを支援するという点で重要な役割を果たしている。
近年、縫製労働者と欧米のキャンペーン組織との間のこうした協力体制が、当初経済的責任を否定した企業に対し、多額の金銭的解決を求める成果を上げている。
だがこうした労働者の権利侵害を明らかにするには、独立した第三者の監査機関が縫製労働者と直に話したり、経営者の書類をレビューしたりする必要がある。そのため、今回Nike社が同意したような、工場監査が非常に重要となる。
  
人々はもはや、サプライチェーンを明らかにしないことを正当化する理由として、「営業秘密」や「競争上の優位性確保」という説明を受け入れることはない。
    
ソース:http://apparelresource.asia/news/item_3017.html
 
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