2017年9月25日

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ロシア語はなぜそんなに難しいのか?

ロシア語はなぜそんなに難しいのか?

「なぜロシアは…」、「何のためにプーチンは…」といった、ロシアに関する検索ワードで、最も人気の高いものを集めた。「なぜロシアは」シリーズの記事で、一つ一つの問題に詳細に答える。今回は習得が難しい、美しい言語、ロシア語を取り上げる。

 

オレグ・エゴロフ、ロシアNOWへの特別寄稿

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日本人のロシア語通訳、岡本茉結さんはロシア語のアルファベットを初めて目にしたときのことを思い出し、「なんだか馴染みのない形の文字がたくさんあるなと思った」と話す。ローマ字に慣れている外国人(たとえアジア人でもほとんどの人は英語には触れたことがある)はまず文字を見ただけで、ロシア語が何やら特殊な言語であるということが解るだろう。
 
◆ 不可解な文字
 
外国人を対象としたロシア語の個人教師ナタリア・ブリノワさんは次のように話す。「外国人はロシア語に33の文字があり、音はそれ以上にあるということを知ると何やら落ち着きをなくし、混乱する。しかもロシア語は書かれている通りに発音しないことがあり(たとえば“хорошо”{良いの意}という言葉は子音がoになっているが、アクセントのない子音をアに近く発音するため、ホロショーではなくハラショーとなるなど)、また複雑な音を持つユニークな文字もいくつかある。 
 
とりわけ発音が難しいのが“ы”の文字。ネット上の議論を見ると、英語を母国語とする女子学生が「ロシア人の友人が英語の単語“table”(机)の”bl“の部分を発音すれば良いと助言してくれた」と書き込んでいるが、それで誰もがうまく発音できるようになるわけではない。外国人学習者がこの厄介な“ы”の音を慣れたころにぶつかる次の課題が“Ш”と“Щ”の音の区別。この似通った2つの音を区別する方法は右下に尻尾が付いているかいないか、それしかないとブリノワさんは話す。
 
このほかにロシア語で厄介なのが力点である。ロシア語の力点はフランス語のそれとは異なり、どこにくるか分からない上に、単語の形によっても変わる。モスクワ大学付属ロシア語ロシア文化研究所の教師アンナ・ソロヴィヨワさんはこの力点の位置については「予測不能」だとして、「なぜ複数になったときに力点の位置が変わるものと変わらないものがあるのかを理解するのはほぼ不可能」と説明する。
 
◆ 6つの格
 
さて、外国人学習者がロシア語の難解な発音の問題をなんとかクリアしたとしよう。そんな学習者を待ち受けている次の関門が文法である。ドイツ人の学生シモン・シルマッハーさんはロシア語学習の経験について「ある程度、格変化を習得できたのは、1年間のロシアでの生活を終えてからだった」と振り返る。
 
格をもたない、あるいは格が単語の構造に影響しない言語を話す外国人にとって格変化はとりわけ難しい。岡本茉結さんは「格によってひとつひとつの単語を変化させるなんて、ありえない」と話す。「しかも動詞の変化があるので、何か一つのフレーズを話すのに、いちいちそれぞれの単語をどの形で使うのか考えないといけないのだから」
 
◆ 複雑な動詞
 
外国人学習者が苦労するもうひとつのロシア語の特徴は動詞の体。ロシア語には完了体と不完了体というものがある。シモン・シルマッハーさんは「いつかこの使いわけをマスターできる日が来るのを期待しているのですが」と丁寧ながらも希望を持てない様子で呟く。一方、この動詞の体について、岡本茉結さんは次のように回想する。「挿絵のついた教科書を何度も何度も読んで体というものを理解しようとしました。“来る”という単語ひとつとっても、その人が今どこにいるのか、まだそこに留まっているのか、もう帰ってしまったかで使う体が違ってくるのです。なんという複雑さなのでしょう」
 
さらにロシア語には運動の動詞がたくさんあり、これもまたロシア語を困難なものにしている。ナタリヤ・ブリノワさんは「例えばイタリア語では行くという単語は“andare”ひとつしかありません。それがロシア語だとそのニュアンスによって“ходить”、“идти”、“пойти”、 “ехать”、 “поехать”、“ездить”といくつもあるのです」と単語の形をいくつか挙げてくれた。またアンナ・ソロヴィヨワさんは移動のためではなく、楽しみのために乗り物を利用すると訳すことができる単語“кататься”がお気に入りだったと話す。そしてロシア語の動詞にはさらに様々な接頭辞が付き、それによって意味が変わってくる。これは外国人学習者に人生は甘くないと思い知らせるためでしかないだろう。
 
◆ ロシア語にもある簡単なところ
 
しかしロシア語はまったく複雑ではないと言う人もいる。たとえば長年モスクワで生活し、仕事をしている日本人俳優の木下順介さんは学校や大学に通わず、短期間の個人レッスンだけでロシア語を習得した。
 
「撮影のとき、カフェの中で、あるいは演劇大学で誰かがロシア語を話すのを聞いて、それを繰り返していました。わたしにとってはそれが最良のレッスンでした」と語る。
 
ソロヴィヨワさんは、ロシア語は英語より難しいというわけではないと指摘する。ロシア語習得には慣れが必要なだけだとして、「もしも外国人が英語を学ぶのと同じように幼いころからロシア語を学んだとしたら、ロシア語もそれほど難しい言語だとは思わないでしょう」と話す。これに関連してナタリア・ブリノワさんも中国語やアラビア語などロシア語より難しい言語もあると述べている。
 
そしてブリノワさんはこう締めくくった。「困難な文法もA2のレベルでほとんど終わります。それさえ終わればあとは自由に制限なく、偉大で美しいロシア語を堪能することができるでしょう」
 
ソース:ロシアNOW/https://jp.rbth.com/arts/2017/02/03/694456

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