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「英離脱交渉」と「バルセロナ独立」をドイツ財界が懸念

     
両者の間に直接的な関連はないものの、状況の進展次第では現地事業や貿易で企業が大きなしわ寄せを受ける懸念が高いためだ。欧州各地で強まる遠心力がビジネスと経済のリスク要因となっている。
   
独産業連盟(BDI)は5日、ブレグジットがドイツ経済にもたらす影響を最小限に抑えるための対策本部を立ち上げたと発表した。離脱交渉が停滞し離脱期限の2019年3月までに英国とEUの新たな通商協定を取り決められなと、経済に巨大なしわ寄せが出る懸念が大きいためだ。BDIのヨアヒム・ラング専務理事は「ドイツ企業は(英国の)極めてハードな離脱に備えて準備を行わなければならない」と危機感を表明した。
  
EUと英国の離脱交渉は、まず清算金、英国に居住するEU市民の権利保護など離脱条件についての協議を行い、これに「十分な進展」があったと加盟国が判断すれば、通商など将来の関係に関する話し合いに進む2段階方式で行われることになっている。また、離脱交渉の期限は19年3月末となっているが、交渉結果は欧州議会などの承認を得なければならず、その手続きに時間がかかることから、18年秋には交渉を妥結させる必要がある。
  
交渉は9月末までに計4回、行われた。だが、双方の意見が対立し早期の第2段階入りが難しい情勢となっていることから、英国がEUとの新たな通商協定を締結しないまま欧州域内市場と欧州関税同盟から離脱するリスクが高まっている。
  
英国はドイツにとって中国、フランスに次ぐ3番目に大きな輸出先国で、工場や出資などの形で行う対英直接投資の残高も1,400億ユーロを超える。このため、新協定が未締結の状態で英国がEUから離脱すると、ドイツ経済は甚大な痛手を受けるとみられる。
  
BDIはこうした事情を踏まえてブレグジット対策本部を立ち上げた。テーマ別に計10の部会からなり、経済団体と企業から計200人が参加する。同本部ではブレグジットが経済関係にもたらすリスクを明確化するとともに、対策案を作成する計画だ。
  
  
独立はスペイン全体に危機に
  
スペイン北東部のカタルーニャ州では1日、独立の是非を問う住民投票が実施された。同投票は中央政府が違憲と批判したにもかかわらず強行されたもので、警察と住民との衝突で多数の負傷者が出た。
  
投票では独立支持が90.1%に達した。ただ、投票率は42%と低く、独立支持を表明したのは有権者全体の36%にとどまる。
  
同州はスペイン経済のけん引車となっており、住民1人当たりの国内総生産(GDP)は3万900ユーロと同国全体の2万5,900ユーロを約20%上回る。
 
経済環境が良好なことから外資系企業も数多く進出しており、スペインに進出したドイツ企業およそ1,300社のうち約40%は同州に事業拠点を置いている。
  
だが、カタルーニャが仮にスペインから独立すると、同州は自動的にEUから離脱することになり、人・モノ・資本・サービスの自由な移動が保障された域内市場から締め出されることになる。このため、地場系・外資系を問わず企業の危機感は大きく、同州に本社を置く大手銀カイシャバンクとサバデル銀行は州外移転方針を表明した。自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の現地子会社セアトも同様の方向で検討している。
  
現地でドイツ語系財界人団体の会長を務めるアルベルト・ペータース氏は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に、外資のなかにはスペイン以外の南欧諸国への移転を検討する企業もあることを明らかにした。カタルーニャ独立の影響は同州にとどまらずスペイン経済全体の危機に発展する懸念が大きいためで、「カタルーニャが咳をすればスペインではインフルエンザがはやる」と述べた。
   
ソース:http://fbc.de/sc/sc40416/