2017年11月1日

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世界で躍進を続ける「ベトナムのアパレル産業」 今後の問題点とは?

世界で躍進を続ける「ベトナムのアパレル産業」 今後の問題点とは?

ベトナムの繊維・アパレル業界において原材料や補助材料を輸入に頼り続けていることが、国が締結した数々の自由貿易協定の恩恵を享受するのに障害となるだろう、と業界関係者は述べた。またそのことは、業界の競争優位性を妨げる要因となると続けた。

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商工省(MoIT)の2016年報告書によると、昨年はアパレル産業で使用される綿の99%に当たる103万トン、約17億米ドル相当が輸入されており、前年比数量で2%、価格で2.5%も増加した。

2016年の糸輸入高も、数量は8.8%増の8万6100トン、金額は5.9%増の16億米ドルとなった。また生地の輸入は、前年比で3.2%増の105億米ドルにも達した。
 
 
弱い国内供給能力

現在ベトナムでは国内の綿花需要量の0.3%、糸需要の40%しか供給できないため、残りは主に米国、中国、台湾から輸入されている。

逆説的なことであるが、ベトナムのアパレル産業は、国内糸生産量140万トンのうち70%以上を輸出する一方で、中国、韓国、台湾から年間約10万トンもの高品質繊維を輸入している。

MoITによると、業界では毎年繊維・アパレル輸出によって何百億米ドルも稼ぐものの、原材料の輸入に稼ぎの半分以上を費やしているため、その利益はわずか20億米ドル以下にしか過ぎないという。

MoITのポータルサイトにおいて輸出入局のTrần Thanh Hải副局長は、アパレル産業が国内生産した原材料や補助材料ではなく輸入に依存しているため、ベトナムの国際競争力と付加価値が大幅に削がれていると指摘した。

国内の繊維会社では毎年約28億メートル相当の生地を生産しており、国内総需要の30%を満たすが、ベトナムではなおも年間61億メートルについて、環太平洋戦略的経済連携協定、EU・ベトナム自由貿易協定、日本・ベトナム経済連携協定のような主要なFTAに参加していない国からも輸入しなければならない。

補助材料についても、ミシン糸、綿シート、ボタン、ジッパー、包装ラベルなどの生産設備はベトナムにあるものの、国内需要を満たせる品質のものはほとんどないため、大量に輸入する必要があるという。

ベトナム繊維協会(VITAS)の2016年報告書によると、アパレル業界はサプライチェーンの中で最も付加価値の低いセグメントとして位置付けられており、輸出の70%は外国企業の一部業務の下請作業、20%は完成品の直接販売、2.9%が自社デザインによる製品販売、そしてわずか1%がオリジナルブランドでの販売となっている。
 

中間工程作業に甘んじる

ベトナム綿紡績協会(VCOSA)会長のNguyễn Văn Tuấn会長は、2016年ホーチミン市で開催されたベトナム繊維サミットにおいて、ベトナムのアパレル産業は例えば糸や最終製品の生産といった生産性が高い工程の中間部分につなぎ止められており、織物やその他の素材の生産は衰えつつあると述べた。

業界の年間成長率を約8%とすると、2025年までに必要な繊維は180億メートルに倍増することになるが、国内生産に対する投資をしなければ、ベトナムはその内の150億メートルを輸入せざるを得ないだろうとTuấn会長は述べた。

彼はまた、ベトナムでは750万の紡錘によって糸の年間生産量は約130万トンあるが、そのうち80万トン以上が中国、トルコの2大市場に輸出されていると指摘した。

 
窮地に陥る産業

さらに悪いことに、多くの国々ではベトナムからの貿易に対し、防衛措置を強化してきた。商工省(MoIT)によると、2007年以降ベトナムの糸や撚糸の輸出についてトルコ、EU、インド、ブラジルから7件の訴訟を受けており、そのうち5件のアンチダンピング、1件の補助金規定違反、1件のセーフガード措置となっている。

そのため、綿花価格がまだ比較的高いのもあって、ベトナム糸の約80%が中国に輸出されているが、この国は安定した市場ではない。ひとたび中国が倉庫にある1100万トンの綿を放出すると決定すれば、ベトナムのこの国における市場シェアは大幅に縮小するだろうと、ベトナム綿紡績協会(VCOSA)は分析している。


サポート産業

一部の市場関係者は、ベトナムの繊維・アパレル産業は、サポート産業の発展を通じてその生産性と現地生産比率を継続的に高めることができるだろうと指摘した。

VITASのVũ Đức Giang会長は数ヶ月前にベトナム通信社に対し、FTAは成長の原動力となるが、繊維・アパレル産業はそれに備えて行かなければならないと述べた。

Giang会長は、第4次産業革命が近づく中、国内企業は染色工程に投資し、堅実な人材育成戦略を実行し、国内での統合されたバリューチェーンの構築に重点を置くべきと提言した。

VinatexのHoàng Vệ Dũng副会長は、2017年8月のVinatexとベトナム石油・ガスグループの会合において、行政が繊維業界団体と協力して原材料や完成品の購買・生産プロセスにおける適切な方針を定めるべきだと述べた。

MoITによると、2017年上半期の繊維・衣料品の輸出額は、こうした問題にもかかわらず2016年同期比で11.3%増の145億5000万米ドルに達したという。

しかし業界関係者は、上半期のような売上高の伸びは長くは続かないだろうと述べている。


ソース:http://apparelresource.asia/news/item_3094.html

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