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海外生活者がイラッとする日本の役所手続き! 日本式書類の問題点6つ

   
日本で婚姻届を提出したときにも感じたのだが、どうやら日本の役所に提出する書類というものは、それが例え国際間のものであっても、頑なに「日本式」で国際結婚者や海外在住者にとっては非常に厄介な代物なのである。
 
そこで今回は、日本式の書類形式がいかに海外在住者にとっては記入しにくいかを、出生届を例に説明しようと思う。海外と関連する日本の書類は、このままでいいのですかね~?
 
出生届記入例(仏大使館の場合)
 
■1.カタカナ表記の限界
上の見本のように、日本大使館への書類はアルファベットで記入できないことになっている。しかし、これが海外在住者には非常に難しい。個人的には、日本語にはない発音の外国語をカタカナで表記すること自体に限界があると思う。例えば上の住所の「フォンテンブロー市」は、フランス語ではFontainebleauと表記するが、「フォンテーヌブロー市」と聞き取る人だっているだろう。「イヴリンヌ県」だって、「イブリーヌ県」にしようか「イヴリーヌ県」にすべきかと迷うかもしれない。
 
日本語には存在しない発音を無理矢理カタカナで書くというのは、簡単なようでいて、これが結構難しい。外国語をカタカナで書いてしまうと、元の音とはかけ離れたものになってしまうことが多々ある。筆者も「prêt-à-porter」が日本語では「プレタポルテ」と表記すると初めて知った時はものすごい衝撃だった。「prêt-à-porter」と「プレタポルテ」では発音が全く違っていて、その違いといえば、降給百貨店で耳にする「いらっしゃいませ」と居酒屋のお兄ちゃんが言う「らっしゃいやっせーい!」ぐらいの差なのである。
 
■2.書く欄が小さすぎる!
全てをカタカナで表記するように強制しておきながら、住所や名前の欄が「これは嫌味なのか?」と思ってしまうくらい異様に小さい。試しに実際にサイズを測ってみたのだが、例えば外国人配偶者の名前を書く欄は縦8㎜×横60㎜。フランス人はファーストネームに名前を3つまで入れられるので、こうなると、例えば「デュポン ジョアン セバスチャン ティエリ」というのを米粒大の文字で無理矢理入れ込まなくはいけなくなるのである。
 
住所欄も同様で、カタカナにするとアルファベット以上にスペースを必要とするのに加えて、どういったわけか県名まで書かなくちゃいけない形式になっているので(フランスでは住所に都道府県名は書かない)、これがもう字面にしたときの「しっくりこない感」は絶大なのだ。
 
 
■3.番地・号=意味不明
日本に来た外国人が口を揃えて「これは不便!」だと言うのが、日本の住所表記方法。欧米では「道路名+建物番号」で住所を特定できるが、日本はある一区画に番号をふった「番地」制。これが欧米人にとっては非合理的でわけがわからないのである。

筆者がフランス生活を始める前、日本に来ていたアメリカ人やフランス人が日本式住所表記に文句を言っていたのを聞いたときは、「そんなん言っても、今まで不便だと感じたことはないし、日本は日本式でいいじゃん」と思ったのだが、それからフランスで生活し始めるようになって、欧米式「道路名+建物番号」の表記がいかに便利でわかりやすいかを実感した。

欧米ではどんなに小さな道でも道路名がついており、それこそ2メートルくらいしかない道とも呼べないような脇道にもご立派に「○○通り」と名付けてある。これが初めていく場所を特定するときにひじょーにありがたい。欧米ではとりあえず「道路名+建物番号」だけわかれば、GPSなんかを使わなくても、とりあえずその場周辺(駅とか)に行って、とりあえずそこら辺の人に聞いてみれば、目的地にたどりつけることが多々あるのだ。

出生届書類の形式の話とは少しズレてしまったが、これらの書類も当然日本式の住所表記で書かなくてはいけなくなっており、非常に厄介。実際に住所表記は、数少ない日本式だった韓国も2014年から一斉に欧米式に改めているらしく、これは日本もそろそろ変えてもいいんじゃないかと思う。「いやいや、日本はこのままでいいでしょう?」と思ったそこのあなた、欧米式に変わったら「めちゃくちゃ便利やん!」と思うはずですから。

■4.捺印とやら
海外生活をしていて、たまーに日本の書類を書かなくていけなくなったときにギョッとして二度見してしまうのが、「捺印」の二文字だ。もうこれは、「今って平成何年だっけ?」と聞かれた時と同じくらい心のなかでアタフタする。「サイン文化」に慣れきった海外生活者にしてみれば、急に判子を出せと言われても、「あれ?判子なんてどこにしまったっけ?」、「いやそもそも持ってたっけ?」、「朱肉なんて持ってる気がしないわー」という具合に非常に焦る。

聞くところによると、「印鑑を押す習慣」が根付いている国はお隣「韓国」と「日本」の二国だけだそうだ。日本の役所に提出する書類だから捺印が必要というのもわからなくはないが、海外生活者にとってはなんとも不便なシステムである。せめて海外の日本大使館へ提出する書類だけは、捺印ではなく署名で良しとしてもらえないものだろうか。

■5.西暦 or 和暦?
海外で生活を始めてから西暦しか使わなくなってしまった人にとって、「今は平成何年?」という問いはタブーだ。いや別にタブーではないけれど、答えられない人がほとんどだろうと思う。そんな人が日本式の書類を書くとなると、いちいち西暦→和暦変換をググって調べて書くということになる。

しかも、海外出産の出生届(婚姻届けも同様)で厄介なのは、外国人配偶者の生年月日は西暦で、日本人の生年月日は和暦で書くというルールだ。このへんを知らずに全て和暦(西暦)で書いて役所に持っていき、書き直しをさせられたという人も少なくない。フォーマットが「日本在住者用」だから、目に見えないわかりにくい書き方ルールが多く、このせいで何度も書き直しをさせられるはめになってしまうのだ。

■6.「通り」問題
2020年の東京オリンピックにむけて、日本は今、着々と「外国人にもわかりやすい道路標識」に変わってきている。たとえば道路名の場合、これまでは「通り」が「dori」など日本語をローマ字表記するだけのことが多かった。しかし、これでは外国人には理解しにくいことから、例えば「電大通り」の英語表記は「Dendai-Dori St.」のように、「通り通り」と日本語と英語の両方を重ねて表記するように変わってきているらしい。

しかし、これで解決かというとそうではないと筆者は思う。日本の通りを英語に変換する場合はいいが、その逆の外国語→日本語変換をすると、果たしてこれでいいのかと疑ってしまう。

というのも、日本語では一言「通り」だが、英語ではstreet, avenue, roadなど種類が豊富だ。フランス語でも、Rue (リュー)、 Avenue (アヴニュー)、 Boulevard (ブルヴァール)、Passage (パッサージュ)、 Allee (アレ)のように道の特徴から言い方を区別する。

これを日本式の書類に書くときはRue もBoulevardも単なる「通り」。こうなると、上の記入例にある「ヴィクトルユーゴ通り」は、フランスには実際に「 rue victor hugo」という道と「avenue Victor–Hugo」という道があり、カタカナで書かれた日本語だけをみたらどっちがどっちかわからない。そもそも住所の表記の仕方も、言語もすべて違うものを、あたかも日本と同じのように無理矢理「日本式」に当てはめさせること自体に無理がある気がしてならない。
 

まとめ
 
このように海外在住者にとっては、日本の役所に提出する書類というのは非常に厄介極まりない代物である。日本の役所なのだから、日本式にすべきだという意見もわかるが、これらの例にあげたようにやはり無理があるので、せめて海外在住者用の書類は別に用意していただけると親切だ。
 
それではどのような書類なら海外向きなのか。それは…
 
●アルファベット表記
●補足としてカタカナで振り仮名をふらせる
●捺印ではなく、署名
●全て西暦に統一
●番地・号フォーマットの削除
 
こんな風に変わってくれる日がいつか来てくれるだろうか…。
 
ソース:https://www.madameriri.com/2017/11/22/shussei-todoke/