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カンボジのアパレル産業は政治的弾圧の代償を支払うことになるのか?【前編】

  
「人々がFacebookでHun Sen首相と一緒に撮った写真をアップしているのを見て、彼と会えるといいなと思っていました。」と彼女はThe Straits Times誌に言った。「私の夢は叶ったのです。」
 
カンボジアの総選挙まで残り7カ月となり、70億米ドル規模のアパレル・履物産業に注目が集まると同時に、一部の労働者は脅威に晒されていると感じている。
 
この業界は強力な政治力を持ち、国の主な雇用源となっている。しかし、カンボジアの反体制派に対する取り締まりについて批判する外国政府の矛先ともなっており、この部門にも悪影響を与えるような経済的ペナルティが科される恐れがある。
 
8月以降カンボジア当局は、批判的な報道機関を閉め出した上で、野党の指導者Kem Sokha氏を反逆罪で逮捕、カンボジア救国党(CNRP)を解散させて、国会議席を再配分した。また、スパイ容疑でジャーナリストを逮捕し、「カラー革命」を起こそうとする人々に警察から警告を与えた。
 
こうした取り締まりは、カンボジア最大の経済エンジンであるアパレル・履物産業の74万人もの労働者の支持を得ようとする与党の試みと並行して行われてきた。
 
アナリストらは、(アパレル・履物産業の労働者は)農村世帯の大黒柱としての役割も担っており、830万人の有権者に大きな影響を与えると指摘する。そのため Hun Sen首相は、週に2回も工場を訪問し、労働者やマネージャーらと会っている。
 
CNRPの台頭により、カンボジア人民党が123議席中の90議席から過半数ぎりぎりとなる68にまで減らした大荒れの2013年総選挙の後、ストライキ中の労働者らは野党支持者らと合流し、政府に月額最低賃金を160米ドルに倍増させるよう要求した。そして2014年に抗議活動が激しくなった際には、少なくとも4人が死亡した。
 
この要求水準はまだ満たされていないものの、その後最低賃金は毎年引き上げられてきた。最新の賃金交渉を受け、政府は10月に来年1月から賃金を153米ドルから(Hun Sen首相の独断による)5米ドルの引き上げを含めて170米ドルに増加させると発表した。雇用主はまた、労働者の国家社会保障基金への加盟に対して、現在適用されている50%負担から全額拠出を求められるようになる。
 
中国に次ぐ世界第2位のアパレル品輸出国であるバングラデシュでは、最低賃金がカンボジアの半分以下であり、メーカー各社は懸念を表明している。
 
「我々は来年の最低賃金を11%も引き上げました。ベトナムでは6.5%であるにもかかわらずです。」とカンボジア縫製業協会のKen Loo書記長は指摘した。「ただし、それは選挙の年であるからだと理解しています。」
 
カンボジアはMarks & Spencer、H&M、Adidasなどのグローバルブランドに対し、スニーカーからシャツまで何でも生産し、最貧国向けの優遇条件によって米国やEUに輸出している。アパレル・履物部門は、年末までに輸出額が6%増加すると予測されている一方で、工場閉鎖によって昨年失われた雇用は1万5000〜2万にも上ったとLoo書記長は言った。
 
(後編につづく)