2018年8月7日

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「独送電網への中国の出資」をドイツ政府が再び阻止

「独送電網への中国の出資」をドイツ政府が再び阻止

政策金融機関のドイツ復興金融公庫(KfW)は7月27日、独送電網事業者50ヘルツの資本20%を政府の委託で取得すると発表した。政府は中国の国有送電会社、国家電網(SGCC)が同20%を取得しようとしたことから、これを阻止するために背後で画策。KfWによる買い取りを取りまとめた。政府は50ヘルツへの国家電網の出資計画を3月に阻止したばかり。経済・安全保障上の重要なインフラである送電網に中国資本が出資することを絶対に阻止する考えだ。

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50ヘルツは独東部とハンブルクで送電事業を展開する企業。もともとはスウェーデンの電力大手バッテンフォールの子会社だったが、欧州連合(EU)の送発電分離政策を受けてベルギーの送電大手エリア・システム・オペレーターと豪投資ファンドIMFインベスターズが2010年に共同買収した。買収時点の出資比率はエリアが60%、IMFが40%。IMFが出資比率を引き下げる場合はエリアに優先的な購入権があることが取り決められていた。
  
IMFは2月、出資比率を40%から20%に引き下げる意向を表明した。エリアは当初、先買権を行使しない考えだったことから、IMFは国家電網に売却する方向で交渉を行った。
  
だが、自国企業を地政学の駒として利用する中国の資本が送電網の運営会社に参加することをドイツ政府が強く懸念。国家電網の出資阻止に向けて50ヘルツの出資者に水面下で働きかけを行い、エリアが先買い権を行使し出資比率を80%に高める取引を成立させた。
  
国家電網はそれでも50ヘルツへの出資を断念せず、IMFに働きかけて残り20%の取得を目指した。これを知ったドイツ政府は再び背後で工作を行い、KfWによる同20%の取得を取りまとめた。具体的にはエリアが再び先買い権を行使して20%を取得。その直後にKfWへと転売する。KfWは同20%を当面、保持するものの、将来的には売却する考えだ。
  
政府がこうした工作を行った背景には、法律に基づく方法では国家電網の出資を防げないという事情がある。ドイツでは貿易法の規定により、公共秩序・セキュリティに支障が生じる恐れがあると経済省が判断した場合、EUと欧州自由貿易連合(EFTA)域外の企業が自国企業に25%以上、出資することを禁止できるものの、国家電網は50ヘルツの資本取得を20%にとどめる計画だったことから、同法に基づく審査を行えない状況だった。
  
政府は中国企業が工作機械製造の独ライフェルト・メタル・スピニングを買収する計画も阻止する考えのようだ。経済誌『ヴィルトシャフツボッヘ』が報じたもので、8月1日の閣議で正式決定するという。ライフェルトの製品は航空宇宙産業のほか、核分野にも投入できることから貿易法の拒否権を行使する。
  
独産業連盟(BDI)のシュテファン・マイル理事は国家電網の出資を阻止した政府の行為について、外資の対独投資に悪影響をもたらすと批判した。
  
  
国家電網は一帯一路と連動
  
ドイツの電力大手は約10年前、発送電分離を求める欧州委員会の圧力を受けて送電網事業を相次いで売却した。政府は当時、送電網にEU、EFTA域外の企業が出資することを警戒していなかった。
  
だが、電力インフラを取り巻く環境はこの10年間で大きく変化した。11年の福島原発事故を受けて、ドイツが再生可能エネルギーの普及を加速させる「エネルギー転換政策」を打ち出したことはそのひとつだ。同政策では独北部の風力発電電力を南部の消費地に供給することが重要な柱となっていることから、送電網はエネルギー政策の重要インフラと目されるようになった。
  
デジタル化の進展を受けて電力インフラが外国政府がらみのハッカー攻撃を頻繁に受けるようになったことも、送電網に対する政府の関心を向上させた。送電網が麻痺すれば経済活動、市民生活に甚大な影響が出るためで、経済省や情報・安全保障当局は深刻なサイバー攻撃を受けた際の対応策を送電事業者と共同で作成している。
  
また、中国やロシアが経済活動を地政学的に利用する傾向を強めていることは、これらの国の企業に対する警戒感を引き起こしている。
  
一方、国家電網は自社サイトに「党(中国共産党)の指導を支え、党の構築活動を強化することは国営企業の根本であり、魂である」と明記しているように、国の活動と経営活動を一体不可分のものとしている。このため、仮に国家電網が50ヘルツに20%出資するようになると、国家電網が派遣する監査役を通して国のサイバー攻撃対策が中国側に筒抜けになる恐れが大きい。
  
送電網事業を世界全域に拡大するという、中国主導の「一帯一路」構想と連動する国家電網の目標もドイツ政府の警戒感を呼び起こしたとみられる。独メルカトル中国研究所(MERICS)のミッコ・フオタリ副所長は同社がすでにギリシャやポルトガルの送電網会社に資本参加していることを踏まえたうえで、「中国企業が10年後に、欧州の送電網で支配的な地位を占めていることを、まったく非現実的なシナリオと言うことはできない」と指摘。ドイツ政府が介入して50ヘルツの資本20%を取得したことは正当だと独メディアに明言した。
  
ソース:https://fbc.de/sc/sc41631/

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