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ミャンマーの中国系工場で発生したストライキ、中国の一帯一路構想に暗雲を投げかける

  
組合役員によると、スウェーデン企業のH&M向けにヤンゴンで衣料を生産しているHangzhou Hundred-Tex Garment社は、最低賃金額として1日当たり3600ミャンマーチャット(2.7米ドル)を支払い、残業に関する労働法を遵守し、解雇されていた組合長を再雇用することに合意したという。
  
同企業は安価な労働力を目的に、ヤンゴン工場を3年前に立ち上げている。以前生産拠点があった杭州市では、月間の最低賃金額が1860中国元(269米ドル)と、ヤンゴンと比較して3倍以上の額を支払っていた。
しかしながら同社はストライキによる大きな打撃を受け、北京で行われている海外との通商関係の拡大といった中国の海外投資にはリスクが潜んでいることを浮き彫りにした。
ストライキ中、ミャンマー人労働者達は工場のドアや窓を打ち破り、中国人マネージャー達複数人を敷地内に閉じ込めた。中国大使館のウェブサイトに掲載された説明によると、マネージャー達は大使館の助けを得て後に解放されたという。
  
中国メディアや地元の報道機関であるGolden Phoenixは、300名近くの労働者が工場を荒らし回った際に7名の中国人スタッフを捉え、金品を奪い、暴行を働いたと報道した。
しかしながら、労働者との交渉にあたったミャンマー労働組合総連盟の執行委員メンバーであるKhaing Zar氏は、中国人スタッフに負傷した者はおらず、全員が自らの意志で工場に残っていたと説明している。
「窓や食堂にあるプラスチック製の椅子がスト中の労働者によって壊されたのは確かですが、機械に対する損害はありませんでした。」
Khaing Zar氏によると、労働者達は同企業が労働法を遵守していないことに憤りを覚えていたが、ストライキに踏み切ったのは工場が労働組合長を解雇した後の1月になってからだという。
  
工場側は、H&Mの代表や地元当局が交渉に関わってくるまでは労働者達の要求に対し強硬な姿勢をとっていたと彼女は説明した。
「現時点では、我が社はこの工場との事業関係を一時保留状態にしています。状況をよく見極め、関係当事者としっかりとした対話を行っており、いかなる暴力からも距離を置いています。」と同社は声明を発表した。Hangzhou Hundred-Tex Garment社、在ミャンマー中国大使館、ミャンマー労働・入国管理・人口省はいずれもインタビューに応じていない。
  
今回のストライキが発生したのは、古代の通商ルートに沿って経済活動の復興を行うという中国のイニシアチブ「一帯一路」構想を促進すべく、北京でリーダー達による首脳会談が開かれるちょうど数週間前であった。中国と国境を接するミャンマーは、一帯一路構想においても地理的・政治的に重要な場所である。
  
中国投資が雇用や景気、友好関係をもたらすというメッセージを北京が伝えようとしている一方で、中国投資の工場や炭鉱、プロジェクトは現場の係争により再三汚名を被っている。
ミャンマーで予定されていた中国の36億米ドル規模の水力計画もまた、地元コミュニティや環境グループの抗議により、無期限の中断が2011年に決定している。
シンガポールYale-NUSカレッジ政治科学科のChin-Hao Huang助教授によると、中国企業はしばし地元の条件との違いに行き当たるという。
  
「中国企業は、現地の法律に従っていないとして度々非難の対象になります。特に労働権や環境保護、企業の社会的責任問題などにおいて顕著です。」とHuang氏は述べた。
  
国際労働機関ヤンゴン事務所の技術顧問チーフNatsu Nogami氏は、Hangzhou Hundred-Tex社の一件は東南アジアで増えつつあるストライキの風潮の一部であると語った。
  
「ストライキは常に最後の砦でなくてはなりません。」
「しかしながら、ミャンマーの様な国々では労働法や労働組合との連携といった事がまだ目新しく、労働者は交渉の余地がないという気持ちにとらわれてしまうのです。」
 
ソース:http://apparelresource.asia/news/item_2790.html
  
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