2016年8月5日

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2016年のフィリピン経済、外食・観光産業が狙い目か

2016年のフィリピン経済、外食・観光産業が狙い目か

フィリピンは、2012年以来継続的にASEAN諸国でトップクラスの経済成長率を維持している。国家経済開発庁のリポートによると、2016年第1四半期のGDP成長率は6.9%となり、サービス業と製造業が景気上昇を牽引している。景気を根本的に支える要因として、GDPの7割を占める個人消費の強さが挙げられ、小売業は今後も継続的に好調である。国家統計局によると、小売の中では特に外食産業の伸びが指摘されている。個人消費は、フィリピン人海外労働者(OFW)からの送金をバックボーンとした、「人材輸出サービス」業の成長に支えられている。

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また海外労働者派遣(OFW)と同様、人材をインターネット上で労働力を提供するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業の成長も大きな要因となっている。BPO産業ではコールセンターをはじめ、経理、給与計算などの事務作業が低価格で行えるため、欧米諸国の進出、業務発注が増えており、フィリピン労働雇用省(DOLE)の発表によると同産業の売上高は今年2016年には250億ドルに到達すると予想されている。

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2015年のフィリピンGDPは約2920億米ドルであり、世界経済の0.47%のシェア率であった。国家経済開発庁(NEDA)はフィリピンの2016年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率が前年同期比6.9%となったと発表した。この値は前年度第1四半期の6.5%から、0.4%伸びており、前年同期の5.9%から大きく上昇した。この成長率は2013年第3四半期(9月期)に次ぐ高い水準となっている。中国6.7%、ベトナム5.5%、インドネシア4.9%となっており、高い成長率となった。ドゥテルテ政権ではGDP年間成長率を7~8%と設定している。

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ただし、四半期推移だけを見ると、第1四半期にフィリピン経済は前四半期比1.1%の成長で、この値は前第4四半期の2.1%には及ばず、低めの水準となった。原因としては特に農業分野での成長がエルニーニョ減少などの影響で、前四半期の3.3%から1.2%に大幅に落ち込んだこと、また産業界も2.8%から1.3%に、サービス産業も1.9%から1.7%に落ち込んだことが要因となっている。 しかしながら全体的には高い水準で推移しており、第二四半期のGDP年間成長率見込みは6.6%の予測となっているため、全体の景気に大きく影響するものではないと言える。2016年度のフィリピンGDPは3070億米ドルに達する見込みである。
 
◆ 観光業・インバウンド
フィリピン中央銀行によるとBPOと共にGDP成長を促進しているのが観光業である。観光業全体では2016年1月~5月までの総額が1066億ペソであり、2015年同期比の939億ペソから13.25%の増加となっている。特に5月の観光客一人あたりの一日の支出平均が5580ペソと、前年同月の4583ペソから21.75%の増額。また月額平均は55、244ペソ(2016年5月)であり、前年同月の26、337ペソから19.22%増額となっており、観光業界の大幅な成長が伺える。
 
海外観光客の国別の旅行者支出では、韓国人の支出が最大であり、7.53億ペソ、2位がアメリカの3.63億ペソ、日本は10.8億ペソで第3位、その後オーストラリア、カナダが4位、5位と続く。東アジアの支出は全体の46.96%を占めた。
 
旅行者数に関しては、2016年1月から5月までのフィリピンへの海外旅行者数は約250万人であった。前年度とくらべると、13%増加(2015年度同期223万人)しており、1月から継続的な成長が見られる。特に2月は前年度比20%と高い水準を見せた。旅行者のうち40.63%が韓国、日本、中国の近隣諸国からのインバウンドとなっている。また、北アメリカが19.74%、東南アジアが9.12%、オーストラリア環太平洋地域が5.88%であった。
 
◆ 輸出傾向
フィリピンの輸出額は2016年5月が47.11億ドルであり、前年同期の48.99億ドルから3.8%の減少が見られた。これは、主な輸出品目である、鉱物資源(-43.8%)、衣類繊維(-41.7%)、
化学(-37.2%)、金属(-14.0%)、電気機器・同部品(-4%)と軒並み減少していることに起因する。
 
輸出額トップは前年5月と変わらず電気機器等(48.0%)となっているが、2015年の23.57億ドルから4%の減少で、22.63億米ドルとなっており、輸出全体の減少傾向はすでに14ヶ月連続で続いている。フィリピン製品(製造品)の輸出は41.76億米ドルであり、前年の41.98億米ドルから0.5%減少している。また、農産物では 2.3億米ドル、前年同期の3.3億ドルから 29.4%減少している。天然資源も13.6%の減少で、2.16億ドル、石油製品も同じく33.4%の減少で2.78億米ドルから、185.7億米ドルとなった。
 
逆に輸出が伸びているのは、雑品 (+188.6 %)、と、木材及び木材製品、家具 (+49.7%)、 輸送機器関連品(+29.3 %) と、その他工業製品 (+1.5 %)。国別輸出先で見てみると、アメリカ (-3.7 %)、中国 (-13.7 %)、シンガポール (-15.7 %)、香港 (-2.5 %)、 東南アジア (-10.2 %) 、欧州 (-5.0 %)が減少。一方日本は増加しており(+1.5 %)、輸出先国では22.1%、10.04億ドルでトップ。1957年から2016年までのフィリピン国家統計局の情報によると、2014年5月に輸出額が過去最高の445143.78米ドルに達したが、その後減少傾向が続いており、2016年全体もこの傾向が続くと予測される。
 
フィリピンは貿易自体に着目すると赤字国であるが、サービス収支・所得収支の黒字で経常収支をカバーしており、これらは冒頭で記述したとおり、IT-BPOサービスと海外労働者からの収入でまかなわれている。IT-BPO産業の成長率の高さ(2016年には250億ドル、22万5000人雇用創出)から、この構造は今後更に顕著なものとなると考えられる。
 
◆ インフレ・金利・物価指数
フィリピン中央銀行によると、年間ヘッドラインインフレ率(総合インフレ率)は2016年6月に1.9%まで上昇した。5月から1.6%、前年比で0.7%上昇している。これは主に食料、飲料品(アルコール類を除く)の指標の上昇に起因する。消費者物価指数も全体的に上昇を続けており、2016年第3四半期には2.1%、第4で、2.2%、2017年第1四半期には2.5%に達する見込み。2015年の1.4%から上昇はするものの、政府が目標とする2.0~4.0%内で推移するとの見通しとなった。
 
これにより、政策金利に関しては、フィリピン中央銀行は6月23日の金融政策決定会合で、3%維持を決定した。翌日物借入金利の3%を中心にして±1%。国内経済の堅調推移、またインフレ率が低めで落ち着いているための決議となった。比中銀は6月から、政策金利に上限と下限を設ける新方式を導入している。これにより政策金利は2017年第1四半期までは3%を維持、2017第2四半期では3.25%と予測されている。
 
インフレの重要指標となる生産者物価指数に関しては、2016年5月期は前年比3.8%の減少が見られる。これは、機械業の18.2%の減少や、器具備品業の12.8%、金属12.5%、衣類10.4%と減少していることが原因である。生産者物価指数は第2四半期終了時の予測値が136ポイントとなっており、前年よりもやや緩やかな物価上昇率が予測されている。
 
◆ 外国直接投資
投資委員会(BOI)によると、外国投資に関しては、2016年第1四半期の7つの主要投資促進機関の合計承認額は260億ペソとなり、前年度218億ペソから19.2%増となった。主要投資機関7つは以下の通り
 
投資委員会(BOI)、フィリピン経済区庁(PEZA)、バターン自由港経済特区庁、クラーク開発公社(CDC)、スービック港首都圏公社(SBMA)、カガヤン経済区庁(CEZA)、 地域投資委員会(ムスリム・ミンダナオ自治区)
 
国別に見ると、オランダが81億ペソで外国投資率31%、日本が44億ペソで16.8%、アメリカが37億ペソで14.3%の第3位と続く。産業別には、工業セクターが96億ペソ、電気、ガス、スティーム、エアコンが66億ペソで25.5%、BPOなどの管理、サポートサービスが54億ペソで20.8%であった。
 
地域別にみると、最も多いのが、カラバルゾン地区(地区IVA)76億ペソで29%、2位が60億ペソでイロコス地区(地区I)の23.2%、3位にマニラ首都圏の22.2%(58億ペソ)が続く。2016年第1四半期の外国直接投資から、53,000名の雇用創出が予測されている。また、今四半期末までに484億ペソの投資、2016年末までには、1500億ペソの投資額になる見込みである。
 
◆ 農業、畜産業、漁業
2016年第1四半期の生産量は4.53%減少。畜産業では生産量が伸びているもの、穀物、漁業台風などによる大きな損失が出ており、結果として全体的な減少となった。総売上高も3752億ペソとなり、昨年の割合を1.49%下回った。分野別には、穀物が8.55%の縮小となり、米で9.97%、とうもろこしで19.07%の損失、一方、キャッサバ、たばこ、アバカ麻、パイナップル、コーヒー、サトウキビ、緑豆は生産量を伸ばしている。穀物全体では2211億ペソで、前年比3.5%の減少となった。
 
◆ 畜産
全体の精算高が下がったことから、家畜業の割合が4.66%上昇し、農産業全体の17.18%を占める割合となった。セクター単体では1.23%の成長率であり、前年度よりやや高い600億ペソの生産高となった。成長の主だった原因のは養豚業の伸びであり、5.47%成長している。家禽セクターは農産物全体の15.85%の生産高で、1.01%割合を伸ばした。セクター単体では前年より522億ペソ増、8.85%の成長を見せている。
 
◆ 漁業
漁業セクターは5.11%減少し、農業全体に対して14.92%に留まった。ほとんどの魚種で漁獲量が減少している。セクター単体でも、生産量が5.43%下がっており、519億ペソとなった。2016年第1四半期の農産物出荷価格は3.19%上昇、主に家禽セクター、穀物セクターでそれぞれ5.5%、7.8%上昇している。一方、畜産は3.27%、漁業で0.33%の割合で出荷価格を下げた。
 
農業、畜産、漁業では全体的に成長が鈍化しているが、ドゥテルテ政権は農業分野への投資を計画しており、各地域に最低10億ペソの予算割当を行うという。このことから来年以降、農業分野での生産増大・輸出量上昇が予想されるが、エルニーニョ現象、台風被害などによる生産量減少も予測されるため、同分野での成長にはしばらく時間がかかるとみられる。
 
文・三宅一道(株式会社クリエイティブコネクションズ&コモンズ)
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