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なぜ日本では「落とし物」をしても必ず返ってくるのか? 5つの理由

なぜ日本では「落とし物」をしても必ず返ってくるのか? 5つの理由

「皆様が何か落し物をしても、きっとそれは戻ってきます。お金の入ったお財布でも、昨年1年間だけでも3000万ドル以上も現金が落し物として警察に届けられました。世界各国の旅行者7万5000人への最新のアンケートでも東京は世界一安全な街とされました。」

「お・も・て・な・し」で話題になった滝川クリステルのスピーチでは、日本の治安の良さをこんな風に紹介した。日本で落とし物をした外国人は、それがたとえ現金であっても、手を付けられないまま手元に戻ってくることに非常に驚く。

事実、東京都で2014年に落し物として届けられた現金が約33億4000万円に上り、そのうち約74%の24億7000万円が持ち主に戻ったことが、警視庁のまとめで明らかになった。

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なぜ、日本では落とし物をしても必ず戻って来るのか。逆に、なぜ海外では落とし物をしたら最後、戻ってこないのだろうか。
 
そこで今回は、日本で落とし物が高確率で戻って来る理由として考えられるものを5つにまとめてみた。あなたはこれらの理由を聞いて、どう思うだろうか。
 
 
■1.
身近な「交番」という存在

 
「落とし物」を語るうえで、交番の存在が果たす役割は大きいだろう。
日本の治安が良好な要因のひとつは全国の交番にあるのではないかと言われるほど、他の国からの注目も高い。警察庁生活安全局地域課の統計によると、2006年4月1日現在の全国の交番数は6,362カ所、交番勤務員は約48,700人である。
 
市民に身近な「お巡りさん」が常にいてくれる場所=交番があるおかげで、落とし物をしたときに何をすべきかということがはっきりしている。
日本では、子どもの頃から「道端でお財布やモノを拾ったときは交番に届けよう!」と教えられるが、こういった教育ができるのも市民に身近な「交番」という存在があるおかげである。交番に行って落とし物を届けたら、それがどういう手順でどういう処理をされるのかというのも、ある程度想像がつく。
 
しかし逆に海外では、落とし物を拾ったとしても(落とし主がすぐ近くにいない場合)、どういう手順で何をすればいいのかわかりづらい。
日本にあるのような「落とし物預かり所」を、日本以外で見かけたことはない。警察に届けるにしても、自分の住んでいる地域のどの場所に警察署があるのか知らない人も多いし、数も少ない。何といっても日本の「交番」より敷居が高く、どの窓口に行くべきなのか、どんな手続きをし、どれくらい待たされるのか?といったことが想像つきにくいし、日本ほど周知されていないように感じる。
 
さらに海外では、拾った財布を手間を惜しんで警察に届けるべきか、なかを見て落とし主に直接コンタクトをとったほうが早いのか、それとも拾った場所がバーなら、バーテンに預けるべきなのか…といった多くの選択肢の中から何を選択すればいいのかがわかりづらい。
 
これに比べて日本では「交番に届ける」というシンプルなルールがあり、警察が仲介してくれるという安心感もあるので、「落とし物を拾ってから届けるまで」の一貫した手順が手早く、身近に、安心して済ませられるという環境が揃っているのである。
 
  
■2.犯罪率の低さ
   
元警察学校教官で、現在は関西大学人間科学部教授の西岡敏成氏はこう語る。
  
「子どもが交番に届けてきた財布の中身がたったの1円や5円程度であろうと、警察官は他の財布と同じように真面目に扱います。」
  
このように日本の警察は、傘やカバンだけでなくビール瓶やトイレットペーパー、フラフープまで、毎日届けられる落とし物を真面目に処理してくれているのだ。その数は、全国で年間2600万件以上にのぼるという。しかし、これと同じことを海外でできるかといえば、なかなか難しいだろう。
 
現在の日本の「遺失物」にかかるコストは非常に高い。落とし物を保管しておくスペースを確保したり、落とし物の管理をするための人件費、時間コストなどを考えるととても警察だけでは手が回らないかという指摘されている。
  
海外のサイトでは、「日本は殺人事件発生率が他の先進国に比べて圧倒的に低く、その他犯罪も少ないので警察が紛失物まで手が回る」と理由を説明しているものもある。
   
  
■3.「おてんとうさま」の道徳教育
   
子どもの頃に「誰も見ていないと思って悪いことをしても、おてんとうさまが見てるよ!」としつけられた人もいるのではないだろうか。
これは、人間の悪事に対して、ほかの人間が誰も見ていなくても太陽はきちんと見ているのだから、どんな時でも悪事ははたらかぬべきだと説く語だ。日本古来の自然崇拝、太陽信仰、神道の中から出てきた表現だとされている。
   
この道徳教育のおかげもあり、日本人は例え誰にも”バレない”状況であっても、モラルをもった行動ができるのではないかと思う。
もちろん、海外にも親切な人はたくさんいるし、他人が見ていない状況でも正しい行動をとる人はいる。しかし、これが国民共通の”教え”として広まっているという点は、日本人の特徴的な部分ではないだろうか。
   
 
■4.集団主義=連帯意識の強さ
 
集団主義というと、同調圧力や「出る杭は打たれる」のようにマイナス面で捉えられることが多いが、実はプラス面も多い。その一つが、連帯意識の強さである。
 
筆者はたまに日本に帰国すると驚くことがあるのだが、その一つに、館内アナウンスがある。地元のデパートやショッピングセンターなどで、「車両ナンバー○○○のお客様。お車のライトがつきっぱなしになっています」というアナウンスを耳にしたときはとても感心した。これは集団主義社会の連帯意識がうまく作用している例である。隣に停めてあるだけの見ず知らずの人の車でも、それで困る人のことを想像して、互いに結びつきを感じ、届け出てあげるのだ。
 
筆者の住むフランスでは、例えライトがつきっぱなしの車があったとしても、それはあくまで「その人個人の問題」である。
それをインフォメーションセンターにわざわざ届け出る人は少ないし、そもそも館内放送というシステム自体がない場合も多い。このへんが個人主義と集団主義の考え方の違いのように思う。ちなみに、フランスにも連帯感(ソリダリテ)という言葉は存在するが、これはテロや労働争議などで主に使われる言葉で、日本の連帯感とはニュアンスが似て非なるものだ。
 
このように常に集団に帰属している意識・感覚が高い日本人は、見ず知らずの他人の「落とし物」を拾ったときにも、落とし主との間に結びつきを感じて、社会の一員として届け出るという行動に出るのではないだろうか。
 
 
■5.遺失物法
 
「落し物の持ち主が3か月間現れない際、落し物は届け主のものになる」という日本の法律、遺失物法。
これが日本で落とし物が必ず返ってくる直接の原因ではないかと分析する海外サイトも多い。
 
さらに、遺失物法28条の「報労金」の項には、「物件の返還を受ける遺失者は、当該物件の価格の百分の五以上百分の二十以下に相当する額の報労金を拾得者に支払わなければならない。」と定められている。つまりこれは、遺失者は拾得者に対して5%~20%の謝礼する義務があるというもの。
 
落とし主が見つかった場合は謝礼金がもらえ、見つからなかった場合は自分のものになるのだから、落とし物を警察に届けて、得することはあっても損することはない。交番に届けるという手間が全くの無駄になるわけでもない。
 
こういった法律のバックアップもあり、落とし物を巡る手順やルールがしっかりと周知されているというのが、日本での「落とし物届け」をしやすくさせている理由ではないだろうか。
 
 
ー 終わりに ー
  
日本で落とし物が戻って来るのは、主に「交番」と「遺失物法」の2つで社会づくりができており、さらに幼稚園からの道徳教育で「落とし物を見つけた時に何が正しい行動なのか?」が周知されていることに起因するように思う。
  
ただ、日本在住経験のある外国人のなかには「日本では自転車や雨傘はよく盗まれる」という人もいる。日本では財布は戻ってくるし、貴重品が盗まれる心配もないのにこの点が不思議だと、過去に2回日本で財布を失くして戻ってきた筆者の旦那も言っていた。
 
 ソース:https://www.madameriri.com/2017/07/26/lost-items-in-japan/

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