2017年8月24日

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欧米の食品の禁輸から3年

欧米の食品の禁輸から3年

3年前、対ロシア経済制裁を科したEU諸国、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどへの対抗措置として、ロシアはこれらの国からの農水産品の輸入を禁止した。対象品目は牛乳、チーズを含む乳製品、大型有角家畜の肉、家禽の肉、豚肉、野菜、果物、卵、魚、甲殻類、軟体類、その他水生無脊椎動物。禁輸でどんなメリットとデメリットがあったのだろうか。

 

キーラ・エゴロワ、ロシアNOWへの特別寄稿

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◆ 物価高

禁輸によって、食料品の価格が上昇し、インフレが進んだ。インフレの主な理由は、2014年12月のルーブル安である。だが国産品の価格も上昇した。これはイギリスBBCロシア支局が試算したもの。モスクワの標準的な買い物客の商品カゴの価格は、2014年8月の価格と比較すると69%高くなっているという。ロシア連邦経済発展省によると、平均価格の上昇率は2014年8月と比較して32%とのことだが。
 
「禁輸措置の悪影響はロシア経済における売上高の減少。所得の大部分が食料品に費やされるため、他の種類の商品やサービスへの支出は大幅に減少した」と、ロシアのコンサルティング会社「キリコフ・グループ」の業務執行社員ダニイル・キリコフ氏は話す。
 
◆ 限られた選択肢
 
禁輸措置は予想通り、国内市場の製品の選択肢を狭めた。ヨーロッパ産の果物と野菜は、トルコ、エジプト、モロッコ、中東諸国の製品に代わった。パルメザン、ハモン、かびチーズなどの高品質のヨーロッパ食品は、ロシア産やベラルーシ産の類似食品に代わった。質の問題はまだ机上にある(改善の余地がある)。
 
「現時点で、禁輸措置はロシア産品の人気上昇に寄与したと言えるが、国民の所得の減少はこのプロセスを遅らせている」と、ロシアのFX会社「Aマーケッツ」のアナリスト、アルチョム・デエフ氏は話す。
 
◆ 小規模農業の復興
 
ロシア政府は禁輸措置を国内生産者の保護措置として活用した。農業を始める人のための最大25万ドル(約2750万円)の政府低額融資プログラムを2012年に始めていたことから、小規模農家は増加した。ロシア連邦農業省と協力して融資を行っているロシア農業銀行によれば、2016年、中小規模の農業体に9200件、総額1915億ルーブル(約3490億円)の融資が行われた。これは2015年の1837億ルーブル(約3348億円)を超えている。
 
「これから農業生産者はローンを返済し、現在の市場の占有率を失うリスクを冒すことなく利益を上げ、増産していかなくてはいけない。だが禁輸措置の期間は価格政策、財務データ、経済情勢にもとづいて限定されなければならない」と、ロシアのFX会社「テレトレード」のチーフアナリスト、ピョートル・プシカリョフ氏は話す。
 
◆ 温室栽培事業の拡大
 
禁輸措置と政府農業補助金プログラムにより、温室栽培事業への投資がロシアの実業家、農業企業、政治エリートの間で人気になっている。
 
大富豪ロマン・アブラモヴィチ氏(フォーブス誌のロシア人番付では資産76億ドル≒8360億円で第13位)の息子アルカディ・アブラモヴィチ氏は、ウクライナとの国境に近いベルゴロド州でトマトとキュウリを栽培することを決めた。2015年末、野菜栽培に特化した「グリーンハウス」という会社を立ち上げた。ユーリー・チャイカ・ロシア連邦検事総長の末男イーゴリ・チャイカ氏も、農業分野への投資を決めた。2016年3月に野菜栽培に特化した「アグロ・レギオン」社を創業した。
 
連邦農業省によれば、ロシアの温室で栽培されたトマトとキュウリの今年7月の収穫量は、昨年の同じ月と比べて19.8%増加した。トマトは570トン収穫された。
 
ソース:ロシアNOW/https://jp.rbth.com/business/2017/08/07/817898

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