2019年5月17日

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インドネシア:運転手へブカプアサを SNSで広がる 配車アプリで「お裾分け」

インドネシア:運転手へブカプアサを SNSで広がる 配車アプリで「お裾分け」

昼夜問わず働く配車アプリの運転手に、宅配サービスを通してブカプアサ(日没の断食明け)の食事を届けよう――。そんな善意の行動がじわりと広がっている。SNS上には、思いがけぬ「お裾分け」を受け取った運転手との心温まるやりとりも次々投稿されている。

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始まりは、あるキリスト教徒の女性の行動だった。ラマダン(断食月)2日目の7日、バンテン州タンゲラン付近から帰宅途中だった女性は渋滞の車中、日没を前にふと「ムスリムと幸せを分かち合いたい」気持ちになり、ゴジェックでピザを注文して運転手に受け取ってもらうことを思いついたという。
 
仕組みはこうだ。配車アプリで料理の宅配を注文した後、運転手に「あなたのブカプアサ用に注文したので、私のところに届けなくて大丈夫」と伝える。支払いは電子マネーを選択すれば、注文者の残高から払われるので、運転手は店で料理を受け取ることができる。
 
この女性の話がニュースになると、ワルン(食堂や屋台)支援のアプリを運用するスタートアップ企業Wahyooの最高経営責任者(CEO)でキリスト教徒のピーター・シェラーさん(35)は「自分もやってみたい」と10日、ゴジェックでナシゴレンを注文することにした。時刻は午後8時前。すでに日没から2時間が過ぎていたが、「ブカプアサにどうぞ」と運転手の男性にチャットで伝えると、予想外の返事が返ってきた。
 
「実はまだご飯を食べていなかったんです。ありがとうございます」。食事も取らず働いていたことにショックを受けたピーターさんは、同僚にも「皆でやろう」と呼びかけた。
 
たちまち行動の連鎖が起き、今、SNSでは「#WahyooChallenge」というハッシュタグと共に、「私もやりました」と、運転手との心和むチャットのやりとりを投稿する人が増えている。ピーターさんは「身内で呼びかけたことが、こんなに流行るとは思わなかった」と驚きつつ、「選挙以来、ネットにあふれるホークス(でっち上げ)やネガティブな話題にうんざりしていた人々の心に、温かい話が触れたのだと思う」と話す。
 
記者も試してみることにした。14日、日没30分前の午後5時20分、グラブのフード宅配メニューから、中央ジャカルタの「ナシゴレン・カンビン」を注文。受けたのは、顔写真だと20代くらいに見える男性だ。チャット画面で「届けなくてよいです。あなたのブカプアサにどうぞ」と送ってみた。
 
「本当ですか?」
 
「はい、OVO(電子マネー)で支払済みです。どうぞ食べてください」
 
「もう一度聞きますが、本当ですか」と返ってきたが、やりとりするうちに信じてもらえたようだ。「本当にありがとう」「お仕事がうまくいきますように」「幸運が訪れますように」と感謝された。押しつけにならないだろうか、と注文前は少し気がかりだったが、8分間のやりとりで温かい気持ちになった。
 
ほどなくして、日没を知らせるアザーンが鳴った。あの運転手も今頃、ナシゴレンを食べているだろうか、と考えた。
 
(じゃかるた新聞:木村綾)
 
ソース:https://www.jakartashimbun.com/free/detail/47657.html

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