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ギリシャがデフォルトの瀬戸際、EUが支援期限延長を拒否

EUは27日に開いたユーロ圏財務相会合で、ギリシャが要請していた金融支援の期限延長を拒否し、支援再開の条件となる財政改革をめぐる協議を打ち切ることを決めた。ギリシャは同日、協議が暗礁に乗り上げたことを受けて、EUなど債権者側が求める緊縮策の受け入れの可否を問う国民投票を5日に実施することを決め、月末に迫った支援期限の延長を求めたが、EUはギリシャの対応に反発して応じなかった。ギリシャはいよいよデフォルト(債務不履行)の瀬戸際に立たされ、29日から資本規制を導入する事態に追い込まれた。

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問題となっているのは、ギリシャがEUなどから取り付けた金融支援の再開の条件となる財政改革。合意できなければ30日に支援が失効し、ギリシャは残る72億ユーロを受ける資格を失い、同日に期限を迎える国際通貨基金(IMF)への15億ユーロの債務返済に行き詰まってデフォルト(債務不履行)に陥る。

財政改革をめぐっては、年金削減、付加価値税(VAT)といった構造改革を求めるEUなど債権者側と、厳しい財政緊縮に反発するギリシャの新政権が真っ向から対立。ユーロ圏は18日、最後のチャンスとして22日に臨時首脳会議を開き、政治決着を目指すことを決め、それまでに新提案を提示するようギリシャに求めていた。

これを受けてギリシャは22日、年金支給開始年齢の引き上げ、雇用者の年金拠出拡大、公務員早期退職制度の見直しによる年金改革や、法人税の課税強化、一部の品目を除くVAT増税、国防費削減などの新提案をユーロ圏財務相理事会に提出。同日の首脳会議では同案が一定の評価を受け、一時は合意に近づいたとみられていた。

ところが、債権者側は新提案を精査した結果、増税に頼りすぎており、歳出削減が不十分と判断。24日と25日にユーロ圏財務相会合を開き、年金削減の上積みなどを要求したが、ギリシャ側が拒否した。このため最後の譲歩として、ギリシャが要求を受け入れれば金融支援の期限を11月末まで延長するほか、残る融資を含めた支援額を155億ユーロに拡大し、向こう6カ月間の債務返済に困らないようにすることを提案した。うち18億ユーロは、月末のIMFへの返済のため即時に実施することを約束した。

しかし、ギリシャのチプラス首相は、厳しい緊縮策は1月の総選挙の際の公約に反し、国内経済の混乱が深まるとして、26日に拒否を表明した。さらに27日未明のテレビ演説で、同条件の受け入れの可否を国民に委ねる方針を打ち出し、7月5日に国民投票を実施すると発表。ギリシャ議会は同日、国民投票実施を賛成多数で承認した。

国民投票の実施には、EUなどに揺さぶりをかけ、ギリシャが望む方向で同問題を決着させる狙いがあるもようだ。しかし、債権者側は同国が合意に向けた協議を放棄し、責任を国民に押し付けたとして反発。ユーロ圏は27日の臨時財務相会合で、「ギリシャへの現行金融支援は6月30日に失効する」と宣言する声明を発表し、ギリシャが国民投票実施に伴って要請していた支援期限の1カ月延長を拒否した。その後の協議ではギリシャのバルファキス財務相を外し、欧州中央銀行(ECB)と国際通貨基金(IMF)を交えて今後の対応について話し合った。ギリシャのデフォルトへの対応や、ユーロ圏全体に及ぶ影響を最小限にとどめるための方策などが議題に上がったとみられている。

ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長は会合後の記者会見で、債権者側は土壇場で寛大な条件を提示したが、ギリシャが応じず「一方的に協議を放棄した」と批判。その一方で「ドアはいつでもオープンだ」と述べ、ギリシャが方針を転換すれば再協議に応じる用意があることを示唆した。

ただ、ギリシャ政府は国民投票実施まで打ち上げたことから、引き返すのは難しい状況。このまま情勢に変化がなければ、30日にデフォルトに陥る。さらにユーロ離脱も現実味を帯びてくる。

2010年に深刻な債務危機に陥ったギリシャは、EUとIMFから総額2,400億ユーロの緊急金融支援を取り付け、財政再建に取り組んできた。その結果、危機は終息に向かい、一時は国債発行で資金を調達できる状態まで回復していたが、1月の総選挙で反緊縮を掲げる野党・急進左派連合(SYRIZA)が勝利し、前政権がEUなどに約束した緊縮策の放棄を打ち出したことから支援が凍結され、状況が悪化。国内では銀行はこのところ預金の流出が加速し、現金自動預け払い機(ATM)には長い行列ができていた。

政府が資本規制導入に踏み切ったのは、ECBが28日、「緊急流動性支援(ELA)」に基づくギリシャの銀行に対する資金繰り支援の上限据え置きを決定し、追加支援を行わないことを決めたため。これによって週明け29日に資金流出が加速するのは避けられないことから、政府は28日に銀行の窓口を6日まで閉鎖し、資金の移動を制限する措置を発表した。ユーロ圏での資本規制は、2013年3月に実施したキプロス(現在は解除)に続く2例目となる。

ATMは利用できるが、1日の引き出し額は60ユーロが上限となる。海外で発行されたキャッシュカード、クレジットカードの保有者に関しては、観光業への影響を避けるため、ATMの利用制限はない。ネットバンキングは利用できるものの、国外への送金は禁止される。また、証券取引所は29日に休場となる。

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