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ギリシャ支援の協議開始で合意、年金改革法制化など条件に

ユーロ圏は13日の首脳会議で、ギリシャへの新たな金融支援実施に向けた協議を開始することで原則合意した。ギリシャがEUなどから求められている年金改革、付加価値税(VAT)増税などを法制化し、国有資産の一部を債務返済のためEUの基金に移管することなどが条件となる。これによってギリシャ救済の道筋がようやく開け、同国の財政破綻、ユーロ離脱という最悪の事態を回避できる見通しとなった。

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合意内容の詳細は発表されていないが、欧米の主要メディアによると、ギリシャ政府はEUが求めている財政再建策のうち年金改革、VAT増税、歳出削減など6項目について、15日までに議会で法制化することを求められる。また、最大500億ユーロに上る国有資産をEUの基金に移管する。基金はギリシャに創設される。EUは見返りに、ユーロ圏の金融安全網である「欧州安定メカニズム(ESM)」を活用した3年間で最大860億ユーロの支援を実施することを約束した。ギリシャが要請した支援額は535億ユーロだったが、EU側は債務問題を解消するには少なすぎるとして、増額が必要と判断した。

ギリシャは国民投票で債権者側が求める緊縮策の受け入れを拒否したが、支援が打ち切られたことで財政・金融危機が一段と深刻化していることから、チプラス首相は7日のユーロ圏首脳会議で、新たな支援を要請した。EUは交渉に応じる条件として、9日までに詳細な財政再建策を提示するよう要求。これに応じてギリシャは9日夜、◇2022年までに年金受給開始年齢を67歳に引き上げる◇貧困層の受給者への特別給付を19年末までに廃止◇年金生活者の医療費負担引き上げ◇外食産業のVAT税率を13%から標準税率の23%に引き上げ、離島への軽減税率適用を廃止することなどによって、年間で国内総生産(GDP)比1%に相当する増税を行う――といった改革案を提示した。

同案はほぼEUの要求を受け入れた内容で、ギリシャ議会も11日に承認したことから、EUは11日のユーロ圏財務相会合で改革案を承認し、12日のEU首脳会議でギリシャ救済で合意すると見られていた。しかし、ユーロ圏財務相会合ではドイツ、フィンランドなどが、ギリシャが改革を約束通りに進める確証がないとして合意を拒否。12日の再会合でも協議が紛糾し、同日に開かれる予定だったEU首脳会議を取りやめ、ユーロ圏の首脳会議で決着を図ることになった。

同首脳会議ではドイツのメルケル首相がギリシャに対する不信から強硬な姿勢を崩さず、厳しい条件を課すよう要求。ギリシャが応じなければ5年間にわたってユーロ圏から離脱させるという案まで持ち出した。これに対して、ギリシャの新提案を評価し、受け入れを迫るフランスのオランド大統領などが反発して協議が紛糾し、会議は日付をまたいで続けられた。その結果、会議開始から17時間後の13日朝になって、厳しい条件つきで支援実施の交渉に入ることで合意に至った。

合意にはギリシャが7月20日と8月中旬に欧州中央銀行(ECB)への債務を返済できるようにするためのつなぎ融資や、債務再編を検討することも盛り込まれた。ただ、債務再編に関しては、ギリシャが求める削減には応じず、返済期限延長や利払い軽減にとどめる。

ギリシャは今回の合意で危機克服に向けた金融支援の目途が立ったが、国民投票に踏み切ったことでEU側の大きな反発を招き、厳しい条件を突き付けられた。事実上の資産差し押さえとなる国有資産の移管は、政府が国営企業の民営化を約束通りに進める保証がないとして、ドイツが求めたものだ。EUの管理化で民営化を進め、売却益の4分の3を債務返済、国内銀行への資本注入に充てることになる。

チプラス首相は緊縮策に反対する民意を盾にEU側から譲歩を引き出したい考えだったが、完全に裏目に出た格好だ。それでも、EUやECBの追加支援がなければ財政が破綻し、金融システム崩壊も免れないことから、条件を受け入れざるを得なかった。

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